3.11メモリアルネットワークでは、震災学習プログラムの提供や震災伝承施設の運営に取り組む皆さまにご協力いただき、2017年以降毎年「東日本大震災伝承活動調査」を実施しており、岩手・宮城・福島における2025年12月までの伝承活動への来訪数調査を実施しましたので、最新の集計結果を報告させていただきます。
※2/2公表後、1団体の修正依頼、1施設の新規回答があり結果を更新(2/21)
本調査では、岩手・宮城・福島の3県で伝承に取り組む32団体・34施設の皆さまに回答いただいた2025年までの来訪者実績数について、閉館・移管8施設済みの過去実績回答含めて32団体、42施設の過去実績を1月~12月をベースとして集計し、推移をまとめました。
2024年に減少に転じた震災学習プログラムおよび震災伝承施設への来訪者数は、2025年も前年比微減にとどまり、2年連続での全体数減少となりました。
2025年は微減にとどまったものの、発災15年を機になくなってしまう財源もあり、この先15年、30年と継続し、今後の災害から命を守る東日本大震災の伝承活動全体の在り方を真摯に向き合う必要性を感じます。
・震災学習プログラム来訪者県別推移
2025年の震災伝承施設の来訪者数は、全体で2024年比97.9%(2013年ピーク時比66.0%)と、微減とは言え減少傾向が続きました。また、県別では岩手は前年比92.1%、宮城は101.1%、福島は96.1%でした。
・震災伝承施設来訪者県別推移
2025年の震災伝承施設の来訪者数は、全体で2024年比99.2%(2023年比96.0%)と、微減とは言え減少傾向が続きました。また、県別では、岩手は前年比93.8%、宮城は101.6%、福島は99.6%でした。
前回2024年は、岩手・宮城が2023年比で減少する一方で福島は増加していましたが、2025年は宮城だけがわずかながら前年比増加する結果となりました。
震災学習プログラム実施団体、震災伝承施設の各運営担当者より、増減要因について選択式で回答いただきました。
(複数回答可。来訪数増加していても減少要因回答可、来訪数減少していても増加要因回答可で集計)
震災伝承施設は、2025年に来訪者が前年比増加したのが13団体、減少が19団体でした。
各運営担当者による来訪数の増加要因回答の最多は「プログラムの質」、次点が「協働や紹介の効果」で、減少要因回答の最多は「震災伝承に対する社会的関心の変化」、次に「来訪者の属性の変化」でした。
また、「その他」としては「伝承者の育成や新規プログラム・学習教材制作にシフトしている」、「バス代等の高騰により実施を諦める学校等が散見」、「3月11日に町内の小学校2校で防災の講話を行う」、「車窓ガイドによる被災地研修者数の増加」、「11月から熊出没による熊警報が南三陸町に発令され2026年1月現時点でもボランティア活動の休止を余儀なくされている」、「4月より業務移管をして体験商品の受付を終了したため」、「令和7年4月より電動カートによる個人向けのガイド事業を開始」などの回答がありました。
震災伝承施設は、2025年に来訪者が前年比増加・新設したのが19施設、減少が15施設でした。
各運営担当者による来訪数の増加要因回答の最多は「協働や紹介の効果」、次点が「営業・情報発信の誘客効果」で、減少要因回答の最多は「活動地域全体への来訪数の増減」、「来訪者の属性の変化」、「他施設・団体との競合関係」が上位でした。
(複数回答可。来訪数増加していても減少要因回答可、来訪数減少していても増加要因回答可)
また、「その他」としては「元地域住民対象のイベント等の企画・運営」、「熊の出没、地震及び津波」、「他の災害に関する視察受け入れによるもの」、「旅行会社のツアー立ち寄り」という回答がありました。
増減要因に関わるエピソードや対策について、自由回答いただいた内容を紹介させていただきます。
高校生以下等の実績数値を分類して集計している団体・施設から高校生以下等(主に校外学習、修学旅行)の来訪数ご回答をいただき、2021年から2025年まで漏れなく回答いただいた団体・施設を対象に集計しました。
震災学習プログラム実施団体の高校生以下の割合は、コロナ禍で63%に高まりましたが、その後少しずつ減少し2025年も42.9%と大きな割合を占めます。一方、震災伝承施設に関しては、事前予約がある分のみの集計など、自由来館ならではの集計の難しさがあるものの、コロナ禍の16.6%から少し下がって2025年は14.8%でした。
来訪者増減要因として、増加と減少を問わず「来館者の属性の変化(修学旅行、外国人等)」を選択いただいた団体・施設がありましたが、全体としては微減・横這いで高校生以下の来訪傾向について前年比での大きな変化は見られませんでした。
震災学習プログラムのオンラインは2020年のコロナ禍に開始され、2021年に最大参加数(36,976人)、20222年に最大団体数(18団体)となったが、その後減少傾向にあり、2025年は参加人数、団体数共に減少しているが、訪問前の事前学習や遠方への移動が困難な学校学習に活用されていました。
震災伝承施設においては、オンラインはほとんど実施されていない結果となりました。
(※2024年調査時まで、震災伝承施設のオンライン参加人数が、その運営団体・関連団体のオンライン参加人数と重複してご回答いただいていることが今回の調査で判明いたしました。新型コロナウイルス感染症による来訪者激減の中で、行政施設としての開催か、運営する民間組織としての開催か、曖昧なままでオンライン配信に挑戦された経緯を鑑みると仕方のない面もあり、集計する事務局でこれまで確認に至らなかったこと、深くお詫び申し上げます。)
【対象】岩手・宮城・福島の3県で震災伝承活動に取り組む団体、施設
【期間】2026年1月8日〜2月2日及び2月22日までの修正・追加回答
【方法】メールで依頼・専用フォームで回答
(閉館・移管済みの施設は過去受領済の実績回答を集計)
【実施主体】公益社団法人3.11メモリアルネットワーク
【アドバイザー】東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授
【協力】一般財団法人みちのく創生支援機構、公益社団法人CivicForce
以下の伝承団体、伝承施設の皆さまに回答をいただき、感謝申し上げます。
・震災学習プログラム:32団体(岩手8/宮城19/福島5)
(岩手)宮古観光文化交流協会 学ぶ防災、三陸鉄道、おらが大槌夢広場、かまいしDMC、三陸ひとつなぎ自然学校、陸前高田観光物産協会パークガイド、トナリノ、陸前高田被災地語り部くぎこ屋
(宮城)仙沼市観光協会(2025年度から体験学習移管)、けせんぬま震災伝承ネットワーク、三陸復興観光コンシェルジェセンター、南三陸ホテル観洋、雄勝花物語、大川伝承の会、石巻観光ボランティア協会、3.11メモリアルネットワーク、女川町観光協会、健太いのちの教室、奥松島観光ボランティアの会、SAY’S東松島、七郷語り継ぎボランティア 未来へ‐郷浜、津波復興祈念資料館閖上の記憶、ふらむ名取、いわぬま震災語り部の会、震災語り部の会ワッタリ、やまもと語りべの会
(福島)相馬市観光協会、ふくしまリアリ、富岡町3・11を語る会、大熊未来塾、いわき語り部の会
・震災伝承施設:42施設(岩手8/宮城25/福島9)
※うち8施設は閉館・移管のため過去実績数値のみをグラフ反映し、2025年分回答は34施設
(岩手)宮古市災害資料伝承館、大槌町文化交流センター、大槌伝承の館、いのちをつなぐみらい館、大船渡市防災学習館、東日本大震災津波伝承館、陸前高田市立博物館、3.11仮設住宅体験館
(宮城)気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館、リアス・アーク美術館、南三陸311メモリアル、石巻市震災遺構門脇小学校・石巻市震災遺構大川小学校、みやぎ東日本大震災津波伝承館、MEET門脇・南浜つなぐ館、石巻NEWSèe、女川町まちなか交流館、東松島市復興伝承館、せんだい3.11メモリアル交流館・震災遺構仙台市立荒浜小学校、津波復興祈念資料館閖上の記憶、名取市震災復興伝承館、岩沼市千年希望の丘交流センター、山元町震災遺構中浜小学校、山元町防災拠点・山下地域交流センター
(福島)おれたちの伝承館、東日本大震災・原子力災害伝承館、東京電力廃炉資料館、とみおかアーカイブ・ミュージアム、福島県環境創造センター、原子力災害考証館furusato、いわき震災伝承みらい館
(閉館・移管)シャークミュージアム、唐桑半島津波体験館、南三陸ポータルセンター、絆の駅石巻ニューゼ、つなぐ館、石巻市まちづくり情報交流館、双葉町ふれあい広場、ふたばいんふぉ
※2020版報告書ブログ:2020年東日本大震災伝承活動調査報告書
(旧3.11みらいサポートWEBサイト)
※2021版報告書ブログ:2021年東日本大震災伝承活動調査報告書
※2022版報告書ブログ:2022年東日本大震災伝承活動調査報告書
※2023版報告書ブログ:2023年東日本大震災伝承活動調査報告書
※2024年報告書ブログ:2024年東日本大震災伝承活動調査報告書
ご協力をいただきました震災学習プログラム実施団体、伝承施設の皆さまに、改めて感謝申し上げます。
2025年の伝承来訪数も2024年に引き続き2年連続で減少してしまい、各団体・施設で、増加している所と減少している所、増減要因を捉えて対応している所とそうではない所の分化が進んできたように捉えています。2023年をピークに今後も来訪数も関心も減っていってしまうのか、それとも命を守る取り組みとして社会の関心を得ながら今後もしっかり継続できるのか、発災15年のタイミングで分岐点に立たされていると感じます。
2024年震災伝承調査報告書では、伝承団体の96%が「継続性の不安」を抱えており、特に岩手・宮城は復興財源の終了と共に被災者支援の資金等が収束し、岩手県・宮城県と福島県との復興発信関連予算、教育旅行・観光関連予算の大きな差も確認されており、今後の在り方が問われています。
本調査の増減結果と増加要因の回答から、以下3点、改めて概要として記載させていただきます。
南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝地震などの巨大災害が待ち受ける日本社会において、本震災伝承調査が、東日本大震災の伝承活動継続や、次の災害から命を守る取り組みに対して少しでも参考になれば幸いです。
私たちの理念である「災害で命が失われない社会を目指す」に共感し、
全国で1,000人を超える方々が広域伝承連携メンバーとして参加しています。
メンバーには、震災伝承や防災・減災に関する最新情報を
メーリングリストやメールマガジンでお届けしています。
想いを共有する方であれば、どなたでもご参加いただけます。