2023年東日本大震災伝承活動調査第2弾速報

東北3県における東日本大震災の2023年伝承活動調査結果を速報させていただきます。

3.11メモリアルネットワークでは、東日本大震災の伝承活動の現状と課題の共有、防災・減災活動の活性化を目的に、毎年、調査を行っています。
「2023年東日本大震災伝承活動調査」第1弾として、2月に、震災学習プログラム・震災伝承施設の受入人数推移の速報を公開させていただき、コロナ禍からの回復傾向や伝承団体の伸び悩みについてメディアにも紹介いただきました。
詳しくはこちら >>> 「2023年震災伝承活動調査(速報)について」

第2弾では、さらに活動状況や見通し、問題意識等についてお伺いするアンケートを実施し、お忙しい時期にもかかわらず、3県18団体・13施設運営組織のご担当者様が協力してくださいました。

伝承活動を現場で担っている方々にとって、「次世代への伝承」が難しく感じられている現状が浮かびあがって参ります。全国の防災力向上につながる取り組みとして、活動継続を支えていただくきっかけの一つになれば幸いです。

伝承活動を継続する上での不安

伝承活動する上での不安

  • 伝承活動を継続する上での不安について、」
    震災学習プログラム実施団体では、「大いに不安」、「どちらかというと不安」が89%
    震災伝承運営組織では、「大いに不安」、「どちらかというと不安」が62%であった。

活動資金の1年後~30年後の見通し

活動資金の見通し

  • 活動財源の1年後、3年後、10年後、30年後の見通しについて
    震災学習プログラム実施団体では、1年後「はっきり見通しがついている」、「だいたい見通しがついている」が半数以上であったが、30年後「はっきり見通しがついている」、「だいたい見通しがついている」回答はゼロであった。
  • 震災伝承運営組織では、1年後「はっきり見通しがついている」、「だいたい見通しがついている」が9割以上であったが、30年後「はっきり見通しがついている」、「だいたい見通しがついている」回答は1団体であった。

活動人材の1年後~30年後の見通し

活動人材の見通し

  • 活動人材の1年後、3年後、10年後、30年後の見通しについて
    震災学習プログラム実施団体では、1年後「はっきり見通しがついている」、「だいたい見通しがついている」が2割程度であったが、30年後「はっきり見通しがついている」、「だいたい見通しがついている」回答はゼロであった。
  • 震災伝承運営組織では、1年後「はっきり見通しがついている」、「だいたい見通しがついている」が7割程度であったが、30年後「はっきり見通しがついている」、「だいたい見通しがついている」回答は1団体であった。

伝承人材育成に必要なこと

伝承人材育成に必要なこと

  • 伝承人材の育成に関して、
    震災学習プログラム、震災伝承施設運営組織、共に「伝承の専任職業としての安定化」を必要とする回答が最多であったが、「専任で支える人材制度の試行」、「伝承人材育成を担う専任組織」の順で一定の回答も得た。
  • 「その他」として、学校等、教育機関との連携の回答があった。

後世への伝承活動継続ために東北3県で必要な専任人材数

後世への伝承活動継続のために東北3県で必要な専任人材数

  • これまでの調査で人材不足の課題が顕在化していたため、岩手、宮城、福島の3県で、何名程度の伝承人材が必要とされるか尋ねたところ、震災学習プログラム実施団体、震災伝承施設運営組織共に、「101名~200名」の回答が最多であった。
  • 震災学習プログラム実施団体、震災伝承施設運営組織共に、「0名」、「1名~10名」との回答はゼロで、一定数以上の専任人材が求められていることが示唆された。

伝承活動継続のために特に重要な資金項目

伝承活動継続のために重要な資金項目

  • 伝承継続のために重要な資金項目について、
    震災学習プログラム実施団体、震災伝承施設運営組織共に「人件費」が最多であった。

震災伝承継続に関する公的な資金支援の状況と今後の期待

震災伝承への資金支援の状況、期待

  • 震災伝承継続に関する公的な資金支援について、
    「どちらかというと十分である」との回答が震災学習プログラム実施団体は1団体
    震災伝承施設運営組織は3団体であり、両者とも「十分である」の回答はゼロであった。
  • 「第2期復興・創生期間」後の公的な資金支援への期待について、
    「公的資金支援の拡充」への期待が震災学習プログラム実施団体は44%、震災伝承施設運営組織は61%であった。一方、「2023年度レベルの維持」への期待が震災学習プログラム実施団体は50%、震災伝承施設運営組織は38%であった
  • 両者とも「第2期復興・創生期間」後に「公的資金支援の収束」を期待する回答はゼロであった。

震災伝承の成果を測るのにふさわしい指標

震災伝承の成果を測るのにふさわしい指標

  • 震災伝承の成果指標に関して、
    震災学習プログラム実施団体、震災伝承施設運営組織、共に「来訪者数」が最多であり、「震災の教訓への理解促進」、「自らの命を守り抜くために主体多岐に行動する態度」が続いた
  • 「復興庁教訓継承サイトの普及開発コンテンツ数」に対しては、震災学習プログラム実施団体が2団体、震災伝承施設運営組織が1団体であった。

後世への伝承活動継続のために特に重要な人材

伝承継続のために必要な人材

  • 後世への伝承活動継続のために特に重要な人材は、
    震災学習プログラム実施団体、震災伝承施設運営組織、共に「語り部」が最多であった。
  • 「伝承施設スタッフ」、「企画スタッフ」、「学校関係者」、「メディア」に対する回答は、震災学習プログラム実施団体、震災伝承施設運営組織で同傾向であった。一方で、震災伝承施設運営組織に比べて、震災学習プログラム実施団体の方が「事務スタッフ」を重要とする回答が多かった。

後世への伝承活動継続のために必要なこと

伝承継続のために必要なこと

  • 後世への伝承活動継続のために必要なこととして、
    震災学習プログラム実施団体、震災伝承施設運営組織、共に「自組織での人材育成」が最多であった。
  • 震災伝承施設運営組織に比べて、震災学習プログラム実施団体の方が「行政による民間の伝承活動の補助」を必要とする回答が多かった。

市町村外、県外からの来訪

  • 有意な回答が得られた15組織の合計において、市町村外からの来訪数が83%を占めた。
  • 有意な回答が得られた16組織の合計において、県外からの来訪数が49%を占めた。
  • 震災伝承施設や活動は、一般的な市民・町民向けの施設・活動とは大幅に異なり、全国からの来訪者の防災力向上の取り組みを、東北被災地の自治体が財源負担していることが示唆された。

 

調査概要

【対象】岩手・宮城・福島の3県で震災伝承活動に取り組む団体、施設
【期間】2024年6月3日〜6月10日
(6月24日の第2次締め切り後、追記公開予定)
【方法】メールで依頼・回答
【実施主体】公益社団法人3.11メモリアルネットワーク
【アドバイザー】東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授
【一部助成】2024年度日本郵便年賀寄付金配分事業

調査協力

震災学習プログラム:18団体(岩手4/宮城13/福島1)

一般社団法人宮古観光文化交流協会、一般社団法人おらが大槌夢広場、いのちをつなぐ未来館、一般社団法人陸前高田市観光物産協会、けせんぬま震災伝承ネットワーク、三陸復興観光コンシェルジェセンター、南三陸ホテル観洋、一般社団法人女川町観光協会、一般社団法人健太いのちの教室、一般社団法人雄勝花物語、大川伝承の会、一般社団法人石巻観光協会(石巻観光ボランティア協会)、公益社団法人3.11メモリアルネットワーク、一般社団法人ふらむ名取、岩沼市千年希望の丘交流センター、亘理町観光協会(震災語り部の会ワッタリ)、やまもと語りべの会、一般社団法人大熊未来塾

震災伝承施設:運営13組織(岩手2/宮城9/福島2)
※複数の施設を運営している組織については、回答は1件としています。

いのちをつなぐ未来館、東日本大震災津波伝承館、女川町まちなか交流館、気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館、南浜つなぐ館・震災伝承交流施設 MEET門脇、石巻市震災遺構 大川小学校・石巻市震災遺構 門脇小学校、キボッチャ、せんだい3.11メモリアル交流館・震災遺構 仙台市立荒浜小学校、名取市震災復興伝承館、岩沼市千年希望の丘交流センター、山元町防災拠点・山下地域交流センター、福島県環境創造センター、原子力災害考証館furusato

※2023年震災伝承調査第2弾は速報であり、今後の追加回答により追記・修正する可能性があります。