【報告】3/19(土) 第4回 東日本大震災伝承シンポジウム”未来へ” 開催

2022年3月19日(土)、岩手県釜石市で「第4回 東日本大震災伝承シンポジウム“未来へ”」を開催しました。
(チラシPDFはこちら

YouTubeでアーカイブ映像を公開しておりますので、ぜひご覧になってみてください。
※JCOM株式会社のご協力により、映像撮影・配信を行いました。
J:COM「東日本大震災に関する取り組み」

 

1.若者による伝承活動実演

はじめに、福島・岩手で語り部活動を行う2組よりご発表いただきました。
発表者:佐藤勇樹さん(NPO法人富岡町3・11を語る会)
    夢団〜未来へつなげるONE TEAM〜


福島県で語り部活動に取り組む佐藤さんは、地震の影響で釜石を訪れることはできませんでしたが、オンラインで語り部の活動を実演してくださいました。地元の釜石高校で活動する「夢団」の皆さんからは、会場で、日頃の取り組みを紹介いただきました。
 

2.基調講演「震災伝承のこれまでとこれからを考える」

東北大学 災害科学国際研究所准教授の佐藤翔輔氏を講師にお迎えし、各地の優れた伝承活動の事例、客観的なデータを元にした効果などをご教授いただきました。

伝承活動を息長く続けるためのヒントとして、伝承と地域活動などを組み合わせることや更新できる仕掛けをつくること、内外部に関わり代をつくること、当事者・非当事者どちらの声も影響力を持つことなど、多くを学ばせていただきました。
 

3.パネルディスカッション

パネルディスカションは、3つのテーマで議論を行いました。

第1部:若者の伝承活動の現状と“続け方”の課題

社会人・大学生・高校生として伝承活動を続ける皆さんから、伝承活動の現状や各世代特有の悩みを共有いただき、若者が伝承を続ける上での課題を掘り下げました。

登壇者:志野ほのかさん(宮城県東松島市 社会人)
    佐藤勇樹さん(福島県富岡町 大学生)
    川原凜乃さん(岩手県釜石市 高校生)
    矢内舞さん(岩手県釜石市 高校生)
進行役:藤間千尋さん(公益社団法人3.11みらいサポート)

◆ 伝承活動を続ける/つなげる上で課題に感じていること
進学しても何かしら関わりたいし、後輩のサポートもしたいが、地元を離れてしまうと物理的に難しい」「今の中高生は徐々に震災を経験していない世代が増えているが、引き継いでいくための仕組みがなく、持続性が課題」「社会人になる前は、休日に活動できると思っていたが、想像以上にやることが多く、語り部活動の準備も考えると、仕事との両立が難しい」と、各世代特有の課題が共有されました。

◆ 「こんな制度/支援/社会の雰囲気があったらいいな」と思うこと
高校生・大学生からは、「進学先で、伝承や防災の活動をしたい人たち集まれるような場やサポートがあると有り難い」「体験する機会があると、活動について知ることができて、やりたいと思った時に参考にできると思う」といった意見が出されました。
また、社会人からは、「兼業届を出したことをきっかけに、職場でも語り部の依頼を受けた。企業や社会全体の理解や後押しがあると有り難い」と、体験を元にした期待の声も上がりました。
 

第2部:若者の伝承活動の”始め方“の具体事例・課題

出身も震災の被害も様々な4人の若者が登壇しました。語り部を始めたきっかけや、一度地元を離れたがその後地元に戻ったエピソード、これから伝承活動を始めたいと思っている人へのメッセージなど、様々な意見が出ました。

登壇者:岩倉侑さん(愛知県名古屋市/宮城県石巻市出身)
    西城楓音さん(宮城県石巻市)
    秋元菜々美さん(福島県富岡町)
    川崎杏樹さん(岩手県釜石市)
進行役:武田真一さん(宮城教育大学 311いのちを守る教育研修機構)

◆ 語り部を始めたきっかけ
「語り部さん」と一口に言っても、活動を始めたきっかけも時期も、一人一人全く異なります。第2部の登壇者からは、「ずっと『話したい』と思っていたところ、誘っていただく機会があり、安心して話すことができた。自分の気持ちも整理できたことで、続けられている」「名古屋では東日本大震災の経験や教訓があまり伝わっていないと感じた。できるだけ経験を還元し、次に来る地震に少しでも備えてほしいと思った」などのエピソードが寄せられました。

◆ 地元に戻るということ
避難や進学等で県外へ引っ越した経験をもつ若者も多い。一度離れた地元に戻り、震災伝承に取り組む登壇者からは、「できるだけ震災のことを考えたくない、話したくない時期があったが、生まれ育った町が自分のアイデンティティを育んできたと感じた。原発・津波で失われた町に向き合いたいと思い、戻ってきた」「地域によって災害に対する危機感の温度差を感じた。元々の環境で災害に対する意識が大きく違う。岩手に戻って、ここから発信したいと考えた」という声があり、それぞれのタイミングで、地元や震災のことに向き合っている様子をうかがい知ることができました。

◆ 被災の程度と、語ることの折り合い
一方で、同じ「被災地」と言ってもその被害の程度はさまざまで、「自分は人に語れるほどの経験はない」「自分は被災者とは言えない」という引け目を感じる人も少なからずいます。登壇者からは「割り切って、積極的に発信していくように心がけた」「経験は一人一人違う、年齢や地域や、被害の程度や身近に犠牲者がいるいないということで線引きがあるように感じるが、話したい人は話せたら良いし、話したくない人は話さなくて良い。話せる場があるということは大事だと常々思っている」「伝えたいという気持ちがあれば、話していいと思うし、自分の経験や当時の被害の大きさは気にしなくて良いと思う。それぞれ経験違うからこそ、学べる部分はたくさんあると思う」といった意見が寄せられました。

◆ これから伝承活動を始めたいと思っている人へのメッセージ
最後に、同世代の仲間への呼びかけと必要なサポートについての質問に対して、「もし話したい気持ちがあるなら、それを大切にしてほしいと思う。また、必ずしも、今すぐ始めなければいけないというわけでもない」「信頼して話せる大人や安心して話せる環境を見つけられると良いと思う」「歳が近い人が話しているといことを知ってもらうというのも一つの方法」「まず、自分の気持ちを大事にするということ。やりたい、やめたい、どちらも大事にして、状況の流れに敏感になってみる」といった、実感のこもったメッセージが発せられました。
 

第3部:伝承人材育成のこれからを考える

若者の震災伝承活動の現状を把握するためのアンケートの結果を元に議論が行われました。アンケートからは、伝承活動のアウトプットの方法が絵本や映画など、多様化していることが見えてきました。
一方、大きな課題として浮き彫りになったのは「語り部活動と日常生活の両立の難しさ」「次の世代にどう継承していくか」という点です。

登壇者:永沼悠斗さん(宮城県石巻市)
    岩倉侑さん(愛知県名古屋市/宮城県石巻市出身)
    秋元菜々美さん(福島県富岡町)
    川崎杏樹さん(岩手県釜石市)
進行役:佐藤敏郎さん(大川伝承の会)

◆ アンケート結果を受けて
登壇者からは「同世代、上下の世代の活動を共有し合う機会がない」「語り部どうしで顔馴染みになり、紹介しあえたらいい」など、同世代での連携を強化する場を求める声が多く寄せられました。

◆ 伝えることの難しさについて
活動のフィールドは違えど、「伝え方がすごく難しく、リンゴと伝えているのにミカンと伝わっていることがある」「伝わったのかどうか難しい。工夫を重ねていく必要性がある」「建物がなくなって、話せなくなっている人もいる」といった悩みを感じており、お互いの悩みに共感する声も上がりました。現場の共通の課題を若い世代で共有して、解決策を一緒に考える場が求められています。

◆ 次の人にどう伝えていくか
自分達の課題がそのまま次の世代の課題にもなるので、そこにアドバイスできるようにこれからも頑張りたい」や「若い世代が活躍しているのは、東北の特徴。歳の近い人からの話の方が次の世代には伝わりやすい」「小学生のうちに高校生のお兄さんお姉さんが震災の話をしてくれた、私たちもああなりたいという子が必ず出てくると思うので、サポートしていきたい」といった頼もしい声が寄せられました。

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行事全体を通じ、登壇者同士の対話の中から、同世代の繋がりを深めることの重要性、安心して語れる場の大切さが気付きとして得られ、大きな学びとして、参加者の方々と共有することができました。3.11メモリアルネットワークとしても、改めて若手が連携、活動しやすい場づくりの重要性を再確認することができました。

この行事の3日前、3月16日深夜に、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生し、福島・宮城を中心に大きな被害が出ました。そのような状況下でシンポジウムを行うかどうか、悩みましたが、災害から命を守るための伝承の発信は決して不要なものではないと考え、無理のない範囲で実施することに決めました。
大変な状況下で、ご協力・ご参加いただきました皆さまには、この場を借りて、改めて御礼を申し上げます。本当に、ありがとうございました。

 

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