【報告】3.11伝承交流講座2021(全3回)開催

2021年度は、岩手・福島・宮城で全3回の「3.11伝承交流講座」を行いました(チラシPDFはこちら)。
各地で継続的に伝承に取り組まれている講師による講座、現地視察、ふりかえりワークでの実践的な学び合いから得られたものを、参加者の日頃の活動に活かしていただく目的で開催いたしました。

※この行事は、「東日本大震災現地NPO応援基金 JT NPO応援プロジェクト」のご支援により開催いたしました。

第1回 2021年7月31日(土) 大槌で「体験プログラム」を学ぶ
第2回 2021年10月17日(日) いわきで「展示、資料」を学ぶ
第3回 2021年11月21日(日) 石巻で「周遊、コラボレーション」を学ぶ

第1回 岩手県大槌町で「体験プログラム」を学ぼう

講師:一般社団法人おらが大槌夢広場 神谷未生さん

第1回目は、午前中に神谷さんのご案内で大槌町内をフィールドワークし、午後からは、おらが大槌夢広場の「体験プログラム」を体験しました。

大槌町文化交流センター「おしゃっち」1階ロビーにある震災前の街並み再現模型でガイダンスを受けた後、旧大槌町役場跡で黙祷を捧げました。
おらが大槌夢広場の現地案内は、語り部さんによって内容が異なりますが、この場所で黙祷をすることは共通なのだそうです。追悼の気持ち思いについても教えていただきました。

午後はおしゃっちに戻り、3グループに分かれて「震災擬似体験プログラム」と「決断のワークショップ」を体験しました。

これらは、おらが大槌夢広場が大災害発災時に命を守るための震災学習の手法を探求し、開発したオリジナルのプログラムです。
震災当時の状況を丁寧に学んだ上で、「あなただったら、どうする?」という問いを立てて、参加者自身の学びを促す内容になっています。

講座に参加した語り部さんからは、「他の団体のワークショップの方法が勉強できて良かった」「リアルでよかった」といった感想が聞かれました。
また、「参加者がどのような行動をとるべきかを考えさせることを主眼に置いている姿勢が良かった」など、神谷さんの伝える姿勢が勉強になったという声もあり、多くの学びが得られた講座となりました。

 

第2回 福島県いわき市で「展示・資料」を学ぼう

講師:いわき語り部の会 小野陽洋さん
   古滝屋/原子力災害考証館furusato 里見喜生さん
   いわきヘリテージ・ツーリズム協議会 熊澤幹夫さん、菅野照夫さん
   リアス・アーク美術館 山内宏泰さん(オンライン)

第2回目は、午前に「いわき震災伝承みらい館」を見学し(オプション)、午後からは「いわき市石炭・化石館」「原子力災害考証館」を見学した後、リアス・アーク美術館の山内さんの講座を行いました。

みらい館では、いわき語り部の会の小野さんの講話の後、館内をご案内いただきました。

午後のフィールドワークは、荒天のため、予定していた常磐炭田の現場に訪れることはできませんでしたが、いわきヘリテージ・ツーリズム体験ガイドの熊澤さん・菅野さんに、「いわき市石炭・化石館 ほるるをご案内いただきました。
その後、湯本温泉旅館「古滝屋」に戻り、旅館の一室を改装して2021年3月にオープンした「原子力災害考証館furusato」を、館長の里見さんにご案内いただきました。

この回は「展示・資料」をテーマにした講座ということで、3つの施設を見学した後、宮城県気仙沼市のリアス・アーク美術館・館長/学芸員の山内さんとオンラインでつなぎ、「リアス・アーク美術館『東日本大震災の記録と津波の災害史』常設展示について」のタイトルでご講演いただきました。
「東日本大震災の前から三陸沿岸部では同様の津波被害は繰り返されてきている」…決して「未曽有」ではなく、自分にも起こりうるものだということを、「記憶」の共有・共感を通じて切実に伝える展示の事例を学びました。
「命を守る行動につながる展示」について、考える時間となりました。

講座の参加者の皆さんからは、「展示の意味を深く知ることにつながった。語り部で写真や現地巡回するときの、言葉の紡ぎ方をより意識したい」「それを通じて、何を伝え、何のために誰に伝えていくのか、しっかり定めておくことの重要さも学ぶことができた」といったご感想が寄せられました。
「作る」「活用する」「紹介する」など日頃様々な関わりをしている「展示」について、改めて学び、考える良い機会になったと思います。

 

第3回 宮城県石巻市で「周遊・コラボレーション」を学ぼう

講師:大川伝承の会 佐藤敏郎さん
   公益社団法人3.11みらいサポート 藤間千尋さん
   がんばろう!石巻の会 黒澤健一さん
   命のかたりべ 高橋匡美さん
   草島真人さん

第3回は、午前中に大川伝承の会・佐藤さんの語り部ガイドを体験し、午後からは南浜・門脇地区のフィールドワーク、藤間さんの講話を経て、まとめのふりかえりワークを行いました。

午前中は、震災遺構・大川小学校を、佐藤さんにご案内いただきました。
「ここで起きた“悲劇”でなく、これからどうしていくか。未来を拓くために伝えていく。」という言葉に、多くの参加者が深く頷いていました。

午後からは石巻南浜津波復興祈念公園内とその周辺を歩いて回りました。
日頃からこの地域で活動している、黒澤さん、髙橋さん、草島さん、みやぎ津波伝承館スタッフさん、藤間さんに交代でご案内いただきました。

その後、南浜つなぐ館に移動し、3.11みらいサポートの藤間さんから、「伝承活動におけるコラボレーションの可能性」について講話いただきました。

「連携が大切」とはよく指摘されることですが、実際には、とても地道で手間がかかることでもあります。
参加者の方からは、「それぞれの場所で語り部さんにしっかりとご案内いただいたが、コーディネートがあるから可能な事だとわかった。立場を越えた繋がりづくりの大切さを感じた」「“Best”や“Win-Win”に配慮したコーディネートの世界を知ることができた」と言った声がありましえた。
この講座が、新たなコラボレーションが生まれるきっかけになれば、主催者としても、嬉しく思います。

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コロナの影響が続き、日程を延期した回もありましたが、関係者・参加者の皆さまのご協力により、無事に開催することができました。

3回の講座では一貫して「このような機会が今後もほしい」という声をお寄せいただきました。今後も、伝承に取り組む仲間とともに学び合える場を作ってまいります。