【報告】新型コロナウイルス影響アンケート(第2弾)結果

3.11メモリアルネットワークでは、新型コロナウイルスの震災伝承、防災・減災活動への影響の広がりを受けて、3月末~4月初旬にかけてアンケートを行いました。それから約2ヶ月が経過し、この度、「新型コロナウイルスの震災伝承活動への影響に関するアンケート(第2弾)」を実施いたしました。
▼アンケート第1弾の結果はこちら

今回の第2弾アンケートでは、この間の状況の変化や各団体・個人ご対応を含め、岩手・宮城・福島で震災伝承活動をされている24団体/個人の方にご回答いただきました。ご協力いただきました皆さま、誠にありがとうございました。

以下のとおり集計いたしましたので、ご報告申し上げます。
また、ご協力いただいた佐藤准教授より頂戴したメッセージを、アンケート結果に続いて掲載しております。

震災伝承活動の現状を多くの方に知っていただく機会になるとともに、活動のご参考になりましたら幸いです。

 

「新型コロナウイルスの震災伝承活動への影響に関するアンケート(第2弾)」

【対象】語り部や震災伝承関連の活動をされている団体/個人
【期間】2020年5月29日〜6月7日 ※一部8,9日回答あり
【方法】WEBアンケート(一部Word回答)
【協力】東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授
【回答者】岩手・宮城・福島の24団体/個人(※宮城県の1団体が名称非公開)

岩手県 宮古市 一般社団法人宮古観光文化交流協会(学ぶ防災)
岩手県 大槌町 一般社団法人おらが大槌夢広場
岩手県 釜石市 一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校
岩手県 陸前高田市 一般社団法人トナリノ
岩手県 陸前高田市 認定NPO法人桜ライン311
岩手県 陸前高田市 一般社団法人陸前高田被災地語り部くぎこ屋
宮城県 南三陸町 一般社団法人南三陸町観光協会
宮城県 南三陸町 海の見える命の森実行委員会
宮城県 女川町 一般社団法人健太いのちの教室
宮城県 女川町 一般社団法人女川町観光協会
宮城県 石巻市 個人(大須武則)
宮城県 石巻市 石巻観光ボランティア協会
宮城県 石巻市 大川伝承の会
宮城県 石巻市 一般社団法人雄勝花物語
宮城県 石巻市 日和幼稚園遺族有志の会
宮城県 石巻市 NPO法人石巻復興支援ネットワーク
宮城県 石巻市 公益社団法人3.11みらいサポート
宮城県 東松島市 一般社団法人防災プロジェクト
宮城県 名取市 津波復興祈念資料館 閖上の記憶
宮城県 名取市 一般社団法人ふらむ名取・閖上震災を伝える会
宮城県 亘理町 震災語り部の会 ワッタリ
宮城県 山元町 やまもと語りべの会
福島県 福島市 NPO法人チームふくしま

 

新型コロナウイルスの影響による累計キャンセル数
  • 4月初旬時点の累計キャンセル数は、30団体/個人の合計で9,235名だった。
  • 今回のアンケートでは、24団体/個人の合計で44,746名となっており、大幅に増加していることがわかった。
    ※6月以降のキャンセル数も含まれている。
    ※各地での語り部やプログラムのキャンセルのほか、一般社団法人トナリノが日本未来科学館で予定していた企画展(中止になった)のおおよその予定者数20,000名が含まれている。
2019/20年の参加者数の違い

  • 2020年3〜5月も団体によっては若干受け入れがあったが、前年同月の参加者数と比較すると、3月は16.6%、4月は1.3%、5月には0.4%なっている(小数第二位を四捨五入)。
  • 3〜5月の3ヶ月間の合計は、2019年の26,899 35,017名から、20年の1,719 1,791名へ大幅に減少している(6.7 5.1%)。キャンセルに加え、例年あるはずの新規予約が無いことが影響していると考えられる。 ※8/14訂正(3か月間の合計人数、昨年比の割合の数字に誤りがありました。訂正し、お詫び申し上げます。)
2020年の夏以降の予約状況
  • コロナ終息の見通しが立たないため、すでに夏・秋以降のキャンセルも入っており、現状全く予約が入っていないという団体もある。
  • 徐々に秋以降の問い合わせが入りつつある(春からの延期分も含む)団体もあるが、例年より少なく、また実質的に「仮予約」の状況といえる。
  • オンラインでの防災研修開催を予定している団体もある。
  • 一方、「震災10年」に合わせて来訪を希望をする年明け以降の問い合わせを受けた団体もある。
  • 緊急事態宣言後も来訪者はすぐには戻らない現状に不安を感じ、観光や震災伝承活動継続への本腰を入れた対策が必要であるとの声もあった。

「今年(2020年)の夏以降の予約状況について教えてください」自由記述より引用

• 0だがウエブで対応予定【NPO法人チームふくしま】
• 未定だがオンライン情報発信のしくみを作り始めている。【一般社団法人トナリノ】
• 兵庫県からの約300名の予約キャンセル連絡を受けた。山元町教職員研修は対策を施したうえで実施する。その他、個別のガイド要請は現時点で受けていない。【やまもと語りべの会】
• 来年1月の修学旅行受け入れなど、多少だが戻る動きがある。【認定NPO法人桜ライン311】
• 5−6月に訪問予定だった修学旅行等が9月以降に「仮予約」の形で2件入っている。10月以降は、とりあえず予約が入ったままの状況(10-11月で3件)。【一般社団法人おらが大槌夢広場】
• 現在予約無し。【震災語り部の会 ワッタリ】
• 9〜12月の合計で13件の予約が入っている。【一般社団法人ふらむ名取・閖上震災を伝える会】
• 9月に学習塾講師へのオンライン防災研修(150名)と現地での予約がある。【一般社団法人健太いのちの教室】
• 例年に比べると団体予約は少ないが、(まだ仮予約の状況だが)秋以降の教育旅行の問合せなどが何件か来ている。【一般社団法人女川町観光協会】
• 6-7月の予約がキャンセルになり、今現在、全く予約は入っていない。夏以降への延期希望も受けたが、状況が安定しないため決められない状況(講演も同様)。写真展開催も予定していたが、日程が決められずにいる。【一般社団法人陸前高田被災地語り部くぎこ屋】
• 5-6月はまだ予約をもらっていない分を含めれば、現状数字以上のキャンセルになっていた。夏以降は個人の予約はまだなし(予約受付を再開していない)。春キャンセルになった団体が秋以降にスライドしており、予約は多くある状態。【(非公開)】
• 春からの延期を含めて7件の予約がある。【一般社団法人防災プロジェクト】
• 現時点では問い合わせ、調整中の案件があるのみで確定の予約はない。【海の見える命の森実行委員会】
• 予約無し。【日和幼稚園遺族有志の会】
• 昨年は4-8月で64件/1,235名の参加だったが、今年は4件/49名のみ。しかし、春の修学旅行等の延期を含め、今年の9月は過去最多の予約人数(件数は少ない)となっている。その他、震災から10年となる来年2-3月の予約が数件あり、コロナの心配はありつつ10年目に訪れたい意思が感じられた。【公益社団法人3.11みらいサポート】
• 夏以降の見通しは昨年比約15%に留まっており、緊急事態宣言が解除されても、観光や語り部活動継続へ本腰を入れた対策が無いと益々状況が悪くなるのではないかと危惧している。【(非公開)】
• 8月までの予約は全てキャンセルもしくはキャンセル見込み。【一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校】
• 毎月数件の予約はあるものの、キャンセルの連絡も入ってきている。【石巻観光ボランティア協会】
• 7月以降もキャンセルが続いているが、予定通りに実施する来訪者もいる。【大川伝承の会】
• 延期になった修学旅行の予約が何件か入っているのみ。【津波復興祈念資料館 閖上の記憶】
• 未定。毎年9-10月に来ていた企業からもキャンセルの連絡を受けた。【NPO法人石巻復興支援ネットワーク】
• 9月、11月に教育旅行合計140人のみ予約が入っています。【(非公開)】
• キャンセルした学校から再度予約が入っている。逆に秋口までコロナの終息が見通せないとのキャンセルもある。【一般社団法人宮古観光文化交流協会(学ぶ防災)】

 

新型コロナウイルス影響下で取り組んだこと、取り組みたいこと

「その他」記述より引用
• 「震災遺構 中浜小学校」語り部ガイド者のための研修資料作成、ほぼ完成。【取り組んだこと/やまもと語りべの会】
• 現在、オンラインで毎週、首都圏の方々とフリーミーティング参加実施(被災地からの情報発信)。今後も同様に続け、またオンラインでの講演へ繋げる。【取り組んだこと・取り組みたいこと/一般社団法人健太いのちの教室】
• 町内での伝承活動を行っていきたい。【取り組みたいこと/一般社団法人おらが大槌夢広場】
• オリジナル(津波対策)コンテンツを作っている。おそらく講座形式で販売後、購入者のコミュニティを形成する。【取り組んだこと・取り組みたいこと/一般社団法人防災プロジェクト】
• 「3.11メモリアルネットワーク基金」による緊急助成を実施した。【取り組んだこと/公益社団法人3.11みらいサポート】

  • 「活動が制限される期間に取り組んだ」「今後取り組みたいこと」について伺い、それぞれ単独で選択された方、「両方」選択された方の人数を整理した。
  • 「新型コロナの影響で伝承活動が制限される期間に取り組んだこと」として、2/3の団体が「プログラムや施設の活動(休止)情報発信」と回答。次いで「新規プログラムや展示物の検討、開発」「震災伝承活動に役立てるための勉強」「キャンセル者への手紙、メール等送付」「プログラムや施設での感染症対策」が多かった。
  • 「今後、新型コロナの第2、第3波襲来を見据え、取り組みたいこと」として、各15団体が「プログラムや施設での感染症対策」「震災伝承活動に役立てるための勉強」と回答。次いで、「新規プログラムや展示物の検討、開発」「紙広報物(パンフ、冊子等)の制作、充実」が多かった。「発信動画の制作」「WEBサイトの制作・充実」「感染症に関する啓発情報の発信」の実施を考えている団体も各10団体あった。
  • 厳しい状況下ではあるが、感染症対策、オンライン発信、情報発信の充実、新規コンテンツ制作など、様々な取り組み、工夫が行われていることがわかる。

「特徴的な取り組みの事例がありましたら、教えてください」自由記述より引用


• コロナ対策噴霧器、フェイスシールド支給、全員手袋支給、マスク支給、持ち歩き次亜塩素酸支給、次亜塩素酸製造機械購入、車両の洗車費用補助、銅板による対策、妊婦、感染可能性者完全有給付与、 ナス利用の遠隔、固定費変動費削減、ビジネスモデルの組み換えとコロナ対応への創出、ひまわり甲子園全国大会のイベントの延長と、ウエブ化など。【NPO法人チームふくしま】
• 他団体へのWEB会議システムの導入支援事業を実施するための体制整備。職員の研修及び事業展開の検討。【一般社団法人トナリノ】
• リモートでの語り部を準備中。今後受け入れを再開はするが、新しいスタイルとして、遠隔での語り部を用意する。第二波で交流が制限された場合への備えにもなる。【(非公開)】
• これまで交流を続けてきた県や市の関係者に対して、中浜小の準備状況等を発信。個人的には、大学の防災授業をリモートで行うことにより、ICTのスキルアップを図った。【やまもと語りべの会(井上さん)】
• (補助金などがあれば)講演・語り部の動画を制作しネット配信・防災教育ワークショップ授業令和のネット配信など新たな収入源を模索したい。【一般社団法人陸前高田被災地語り部くぎこ屋】
• 次世代を担う若人達のウィズコロナネットワークとして学生委員会の創設。次世代を担う若人達のウィズコロナネットワークとして学生委員会の創設する意義は、コロナ禍の自粛活動の中で若い世代に、今まで参加してくれたボランティアや予約していた若者に対して連絡したところ、戸惑いと不安の解消がうまくいかない若者もいたり、友達が前の友達でないような言動したりと日常生活のいっぺんにより負の連鎖に陥ってしまう事がヒアリングの中で私達大人の耳に入ってきた。その状況を見かねたセンター長は自宅にいてもボランティアが出来るオンラインボランティアのキーパーソンになりえるメンバーを構築、あっという間に学生委員会がたちあがりオンラインネットワークが広がりを見せ始めている。若者達は何かきっかけがあれば、人の為に何か活動したい、自分の成長につながる活動をしたいと思っている事がコーディネーター次第でネットワークにつながる事が今回のコロナ禍に対する取組みとして大切。【海の見える命の森実行委員会】
• 若手のスタッフが中心となり「震災伝承動画」を作成した。【公益社団法人3.11みらいサポート】
• いのちをつなぐ未来館のプログラムとして、オンラインを活用したガイドや語り部プログラムを5月のGW期間にあわせて造成。また、秋以降の県内の教育旅行や復興教育の需要増を見込んで、一クラス単位での実施を想定した新プログラムの造成。【一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校】
• 大川小学校遺構工事に伴い案内板も一時撤去となるため、別な室内にパネルとして展示をしている。 【大川伝承の会】

 

今、不安に感じていること

「その他」記述より引用
• 不安を持つ前に、社会環境に臨機応変に対応する思考が必要だと思います。未災地は確実に存在するので、現地語り部という活動をリセットして考えてます。要は来ない方(未災地)に伝承する活動方法に注力した方が良いと感じてます。【一般社団法人防災プロジェクト】
• 伝承活動を取り巻く社会環境に関する不安とはコロナウィルスそのものの脅威より人としての心の在り方の問題が不安である【海の見える命の森実行委員会】

  • 24団体中17団体が、「人の移動(旅行等)の減少」に不安を感じている。次いで「学校の防災教育等活動の減少」「企業のCSR活動の減少」への不安が多く挙がった。
  • 12団体が「時間の経過等による、災害への関心の低下」、9団体が「新型コロナに注目が集まることによる、災害への関心の低下」に不安を感じている。
  • 不安「なし」という回答はなかった。

「その他」記述より引用
• 高齢者が多い語り部にとって感染症は脅威 【やまもと語りべの会】
• 対応するスタッフや語り部が感染リスクへの不安感をもつこと、そのリスクを避けるために語り手がいなくなってしまうこと【(非公開)】

  • 24団体中18団体が、「活動を通じて参加者が感染してしまう危険」について不安を感じている。次いで「対策や自粛に関する判断基準」「活動時の感染症予防、対策」「活動を通じて自分が感染してしまう危険」への不安が多く挙がった。
  • 不安「なし」という回答はなかった。
震災伝承活動の継続に関する助成・支援

「具体的な助成・支援名を教えてください」記述より引用
• 民間)3.11メモリアルネットワーク基金新型コロナウイルス緊急対策助成【一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校、一般社団法人トナリノ、海の見える命の森実行委員会】
• 持続化給付金(これから申請)【NPO法人石巻復興支援ネットワーク】
• 持続化給付金、休業協力金(これから申請)【公益社団法人3.11みらいサポート】

  • 「ない」「知らない」という回答が大多数を占めたが、数団体、活用しているところもある。
伝承活動の継続見通し

  • 半数にあたる12団体が、「問題があるが、変化に対応しながら活動継続できる」と回答。
  • 「問題があるが、今まで通り活動継続できる」が6団体、「問題がなく、今まで通り活動継続できる」が1団体、「わからない」が4団体。
  • 「問題があり、活動を継続できない」と回答した団体はなかった。
各団体から「現状や今後の対策等について共有したいこと」

●伝承の危機的状況への懸念や心構え

• 団体としての存続への不安ももちろんあるが、それよりも、語り部を継続しないことによる、『伝承』そのものの文化の醸造ができないことが心配。そもそも、震災の伝承は、少ない人数で細々と続けられて来た感があるのに、このコロナの影響で活動が完全にストップしてしまったことで、「無くてもいいもの」になってしまう気がする。【一般社団法人おらが大槌夢広場】
• コロナ感染に関心が集中しているが、災害が起こる原因と感染症拡大の原因は、異なることであり、同時に発生する場合があり、防災に関する発信の重要性に変わりはないことを伝えていかなければ、いざというときに命を救えない。震災での教訓は、伝え方を工夫することでこれからの生活様式にもかかわってくることを自信をもって伝えていきたい。【やまもと語りべの会】
• 伝承活動を取り巻く社会環境に関する不安とはコロナウィルスそのものの脅威より人としての心の在り方の問題が不安であるが、日常生活の変化にネットばかりの生活スタイルの中で異時間のウィズコロナを与える時と活動は大事である。【海の見える命の森実行委員会】

●今後の活動や方針

• 働く人の身を守るのが最優先。【NPO法人チームふくしま】
• 新型コロナの状況下、収束まで安全を一番に考え新しい発信の方法を考え(オンライン活用・SNS発信・ホームページ(情報の充実)発信し、次へのステージに備えて行きたいと考えている。【一般社団法人健太いのちの教室】
• 語り部としてのレベルUPを図る取り組みが必要と考える。交流も含めて。【一般社団法人ふらむ名取・閖上震災を伝える会】
• 和歌山県の津波想定区域在住の家族に1年間継続的にアドバイスをしており、親子の津波避難の練習や防災会議を繰り返している。この方法を公開し、大切なわが子・家族の命を守るために、独自避難訓練や家族会議を実践する世帯が増えれば、南海トラフ等災害時に助かる命が多くなると考え、商品化企画中。【一般社団法人防災プロジェクト】
• 先日「いわて感染制御支援チーム(ICAT)」というチームが東日本大震災の時に岩手県で生まれ、その後の災害で避難所の感染症対策や、今回のダイヤモンドプリンセスの時も動いていたことを知った。震災伝承関係者が集まって彼らの話を聞く時間を作れたら良いと思った。【公益社団法人3.11みらいサポート】

●呼びかけ

• 他団体へのWEB会議システムの導入支援事業を実施するための体制整備を行っている。導入に関して相談事項があればおつなぎいただきたい。なお、遠隔でも可能な範囲で対応するため、活動場所は問いません。【一般社団法人トナリノ】
• 伝承活動は重要だが、人が集まるところには足を向けない方が良い。WEB開催の活動が充実出来るのであればうまく利用しましょう。【大川伝承の会】
• 感染防止対策は、語り部や伝承施設に限らず必須になるため、実施する。リモートや遠隔での伝承活動の提供を準備中で、ハードルはそれほど高くないが、このような形のニーズが参加者側にどのくらいあるかが、まだ不透明。本ネットワークなど大きな枠組みの中で、ニーズ調査、ヒアリング調査などをしていただくと、それを活用し、各団体も取り組めるのではないかと感じる。これに限らず、地域側ではなく、参加者利用者側の声や今後のニーズを拾うことが必要と感じている。【(非公開)】
• 教育旅行等含む団体受け入れのルールや伝承内容・プログラムの共有ができると良い。【(非公開)】
• 6・7月の予約もキャンセルとなり、それ以降の講演・語り部、また写真展開催の予定が決まらず、足踏み状態である。資金面が苦しく、活動が継続できるか、難しい状況になりそうだ。防災教育事業(語り部・講演)などの、学校での取り組みに、補助金をお願いしたい。【一般社団法人陸前高田被災地語り部くぎこ屋】

 

メッセージ
東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授より

1. 利用需要への影響

今後の見通しについては,①夏期・秋期もキャンセル,②逆に春期利用のキャンセルが秋期に集中的にシフトする,という利用者側の大きな2つの動向が存在することが本調査で明らかになりました.このような例年にない利用者動向や,第2波が発生するかもしれないという不確実性の中で,活動されている方々は今後も対応に苦慮されることが容易に想像されます.

2. コロナ禍で求められる活動アプローチ

今取り組むべきアプローチは,①すでにいくつかの団体・個人が取り組んでいるようなオンライン発信のような遠隔対応のほか,②移動を抑制されているさなかであるからこその「地元での活動」の充実化です.普段の活動の多くは,域外(県外)からの利用者が大半を占めています.震災発生から10年が経とうとしているなか,当時の出来事を知らない世代が存在することはもちろんのこと,体験した世代も地域の中で起きた出来事を必ずしも共有していない傾向があります.外部からの利用者が一時的に減少している状況において,ここで「足元(地元)」での震災記憶の呼び戻し,それに関連する防災・減災の取り組みの充実化に注力することも重要です.

3. 3.11メモリアルネットワークへの期待

①コロナ禍での震災伝承活動継続ガイドライン(仮)の作成,②コロナ禍での活動継続支援のための助成(すでに実施済)の2つが必要です.本調査では「活動中の感染リスク」,「感染対策のノウハウ」,「対策や自粛に関する判断基準」などが不安に感じる事項として多く挙げられました.これらは,個々の団体・個人で検討することもできますが,類似する活動内容・環境であれば,対策の方法や判断基準を共有することもできます.これを機会に,BCPの観点からも標準的な震災伝承活動継続ガイドライン(仮)を作成することを提案します.今回の助成・支援については,そもそも政府,自治体などから震災伝承活動に対するものは存在していないようです.3,11メモリアルネットワークでは,基金を活用した助成・支援を迅速に実施しており,そのような状況をカバーできていると言えます.