福島県大熊町

木村 紀夫さん

大熊未来塾~もうひとつの福島再生を考える~
福島県大熊町の海沿いにある熊川地区で生まれ育つ。東日本大震災の津波で自宅は流失し、父と妻、次女が行方不明になったが、東京電力福島第一原発事故により捜索が打ち切られ、その後、次女の汐凪(ゆうな)さんの遺骨の一部が発見されるまで5年9か月を要した。
避難先の長野県から現在は福島県いわき市に拠点を移し、中間貯蔵施設立地区域内に含まれてしまった自宅跡に通い、捜索を継続する傍ら語り部として活動している。
伝えていること

次女の捜索から、伝承活動へ

震災当日の夜、木村さんは津波で流された自宅跡にかけつけ家族を捜しましたが、福島第一原発から3km圏内に位置していたため、避難せざるを得ない状況となりました。地元消防団も同様に、住民の避難誘導のため捜索を中断。その後、父と妻は遺体で見つかりますが、次女の汐凪(ゆうな)さんが発見されず、5年9か月が経過して遺骨の一部が発見、未だにその8割は見つかっていません。

原発事故により捜索を中断する直前、自宅跡周辺で「男性の声のような音が聞こえた」と言う地元消防団員が数名おり、周辺で行方不明者はいなかったことから、木村さんの父である可能性が高いと考えられます。その父と汐凪(ゆうな)さんは児童館から一緒に車で海に近い自宅へ向かったため、「もし捜索をつづけられていたら、少なくとも二人を遺体で見つけることができたのではないか」と語ります。

2019年春まで避難していた長野県白馬村では、エネルギーの消費を抑えながら自給する生活を送る傍ら、大熊町へ通い捜索活動を継続、2013年4月には「team汐笑プロジェクト」を立ち上げ、同年9月よりボランティアを受け入れた捜索を開始しました。県内外の学校や企業から講演依頼を受けることもありましたが、2015年2月に町内の帰還困難区域、中間貯蔵施設区域内を案内するスタディツアーをはじめて実施。

被災各地では、復興工事により震災前の町の面影が失われた地域は少なくありませんが、帰還困難区域、特に中間貯蔵施設立地予定区域の造成されていない場所は、原発事故により失われた時間を感じられる景色がそのままのこされています。
「自らも電気をつかっていた者の一人として、二度と同じことを繰り返さないため、次世代に教訓として継承する責任がある」と伝承活動を継続し、町内の現状を時間の経過とともに知ることができる機会を創出しています。

大熊町から発信し、未来を考える

大熊町の現状や持続可能な社会を考える機会をつくるため、2020年4月には「大熊未来塾」を立ち上げます。定期的なツアーを準備していた矢先に新型コロナ感染症が拡大、急きょオンラインで開催することとなりましたが、立ち入りに制限がある帰還困難区域内を案内するハードルが下がり、特に若い世代へ伝承する機会としてオンラインは有効でした。

2021年3月には「原子力災害考証館furusato」の開設時より、写真と遺品をつかって次女の捜索活動をイメージした展示を開始。また、多様な協力・支援のもと、定期オンライン配信や機関誌の発行もはじまりました。

大熊未来塾では、「大熊町から、未来を考える」をコンセプトに、他の被災地の伝承者をゲストに招いたトーク、双葉郡で伝承活動をしている若者とともに沖縄の伝承に触れるなど、大熊町に限らず社会全体の未来を考える機会を、地域や世代を超えて実践しています。

今後も、家族の避難行動をもとに災害から命を守る大切さ・学校防災の重要性を伝えるとともに、経済優先の社会に対し問いかけ続けます。

 

お問い合わせ先
お問い合わせ先 大熊未来塾
所在地 〒979-0331 福島県いわき市久之浜町末続字代48-1
※楢葉町に事務所建設中
電話番号 090-3644-8722
E-mail team.yuusyou@gmail.com
※@は半角にしてお送りください。
URL https://onl.la/hrPXWSy
語り部の料金
  • 出張講演:10,000円/回、別途交通費※予算に応じて相談可
  • オンライン語り部、現地でのご案内については検討中
関連リンク