草の根の連携組織が、東北の伝承にできること

会員インタビューの第1回目は、2018年12月に共同代表に就任した、武田真一さんにお話を伺いました。

武田 真一(たけだ しんいち)

宮城県栗原市出身、仙台市在住
東日本大震災時に河北新報社報道部長。編集局次長などを経て2016年4月新設の「防災・教育室」室長に就任。震災伝承と防災啓発のプロジェクトに取り組んだ。宮城教育大学の新設組織「311いのちを守る教育研修機構」担当の統括プロデューサー。ほかに東北大学以外科学国際研究所学術研究員。

10年の節目が過ぎた後も、
伝承の重みを低下させないために

 武田さんの「震災伝承」との関わりについて教えてください。

今年の3月まで、河北新報社で震災伝承と防災啓発のプロジェクトを担当する部門の責任者をしていました。定年退職を機に、宮城教育大学が今年の4月に新設した「311いのちを守る防災教育研修機構」をお手伝いすることになりました。
広く地域と世代を超えて震災の教訓を伝え続けるためには、「次の世代を担う人たちにどう引き継いでいけるか」が最大の焦点です。その意味で、学校現場での伝承の役割は非常に大きい。教員養成を担う宮城教育大学として、世代を超えた伝え継ぎの重要性や責務の教育は大切なことだと考えています。

 共同代表として、ネットワークの意義と課題を教えてください。

岩手・宮城・福島の3県にウイングを広げて、被災した現場で地道に活動している団体や個人をつなぐ役割を担い、被災地全体として一緒に伝承していこうというのが、3.11メモリアルネットワークの特徴であり、非常に重要な点だと思います。
一方で、組織としてはまだまだ課題も多く抱えています。民間のネットワークの存在意義が、地元はもちろん、全国、世界で認識されていくように、組織の基盤を作り成長していかなければなりません。
草の根の広がりをもってつながりをつくろうとする民間ネットワークの取り組みは、行政が上からしくみをつくる従来のパターンよりも、強い基盤をつくれる可能性があると考えています。ネットワークの動きが刺激剤となって、産学官民メディアの様々な伝承の動きが一緒になって機能し、東日本大震災と同じ犠牲を繰り返さないという目的に向かっていく必要があります。3.11メモリアルネットワークは、その基盤になれる組織だと思っています。

 今後の展望をお聞かせください。

2021年3月、あと1年半で震災から10年という大きな節目を迎えます。先行被災地の例をみても、10年を区切りに、発信される情報量、世の中の関心も加速度的に低下していくことが懸念されます。10年の節目を挟んで、伝承の重みを低下させないように、これから、ネットワークの活動やほかの公的な伝承活動との連携を維持し発展させていけるかどうかが問われています。
産学官民とメディアが一緒になって、震災伝承と防災啓発を全国、世界に向けて展開できるかどうか。東北ではまだそれが十分に実現できていません。メディアにいた経験、(現在所属する)大学での立場、草の根の連携組織3.11メモリアルネットワークに関わっている立場として、目指すところを実現する役割を重く受け止めています。