「語り」が生み出す意識・行動変化調査結果(引用可能)
「語り部さんのお話を聞いた人は、実際にどう変化するのか」について、日本赤十字社宮城県支部、東北大学災害科学国際研究所佐藤翔輔准教授の全面的なご協力の下で、「JRCオンライン語り部LIVE」参加者へのアンケートを実施した結果を報告させていただきます。
※2023年5月の記事を、2024年12月に追記修正しました!
調査結果の引用について
2011年以降、東日本大地震被災地では、震災の経験と教訓を伝える「語り部」の活動が継続され、多くの
3.11メモリアルネットワークが実施した「2023年震災伝承活動調査」で、2023年は、年間で約18万人の方が「語り部」を含む震災学習プログラムに参加したことがわかりました。(岩手・宮城・福島の3県29団体の合計)
全国各地で地震や水害等で大きな被害が発生している昨今の状況下で、いざという時に命を守る震災学習の必要性が、広く認識されるようになっており、東北で継続している「語り」が、参加者にどのような意識の変化や行動の変化を生み出すのか、2021年度より調査を継続しています。
「JRCオンライン語り部LIVE」配信会場の様子
2021年度~2023年度の「JRCオンライン語り部LIVE」に参加した3,012名の児童・生徒(小中高校)のアンケート回答を集計したところ、次のようなことがわかりました。
1.意識の変化:自分の中で変わったこと
語り部さんのお話を聞く前と、聞いた後で、「自分の中で変わったこと」があるかどうかを質問したところ、お話を聞いた直後は84.8%、年度末(3月)の追跡調査時には72.7%の児童・生徒が「自分の中で変わったことがある」と回答しました。
「変わったこと」の一例として、次のような回答がありました。
- 語り部さんのお話を聞いて災害のこわさを知りました。もし今、災害が起きたら、すぐに行動できないと思うけれど、これからは、自分の身を守れるように、ちゃんと考えようと思いました。
- 「自分の身は自分で守る」ことに加えて、「大切な人を守りたい」という気持ちになりました。
- 今までは災害の映像を見ても「大変そうだな」と他人事のようにとらえていましたが、語り部さんのお話を聞いて「もし自分だったら」と考えるようになりました。
- 家族や地域の人にあいさつをよくするようになった。
- 1日1日を大切に過ごすようになった。
- 災害や戦争で命を失ったり、日常をうばわれることがある、この命や日常はたくさんの人に守られながらあるから、家族や友達、地域の人、それぞれに感謝しながら生きていきたいと思った。
2.行動の変化:聞いたことを家族に話した
「聞いた話を誰かにしたいと思うか」という質問では、語り部を聞いた直後は79.3%の児童・生徒が「家族に話したい」と回答し、年度末(3月)の追跡調査時には、64.9%の方が実際に「家族に話した」と回答しました。
家族で話し合った内容としては、次のような回答がありました。
- ハザードマップを見て、近所の避難場所をチェックした
- 地域の地形を理解しようとした
- 安全なところにひなんするため、計画を立てた
- (災害発生時に)もしも1人だった場合のことを話し合った
- もしもバラバラで災害が起きた時の集合場所
- 家具の固定、防災バックの準備をした
地道な取り組みですが、語り部さんのお話をきっかけに、参加者一人一人の意識が変わり、行動が変わることで、災害で命が失われない社会に近づいていくのではないでしょうか。
3.11メモリアルネットワークでも、今後も伝承活動を支え、多くの方へ届けるための発信を続けてまいります。
引用について
今回の調査結果は、発表や論文に引用していただくことができます。PDFダウンロード
もしよろしければ、使用される場合は、以下のWEBフォームにて、申請をお願いいたします。
・今後の情報発信、資料改良に役立てる目的です
・2〜4分程度で入力完了する内容です
・ご希望される方には、パワーポイントのデータをお送りいたします