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「戻らない」の今後を考える―熊本地震後の企業対応から、今できること

2026年7月28日の熊本地震。その後、イオンモール熊本で発生した爆発事故では、避難した後に館内へ戻った従業員の方々が犠牲になりました。被害を遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます

15年前の東日本大震災発災時には、地震後に自宅や店舗に「戻ってしまった」方々が沢山おられました。

参考リンク:「なぜ多くの人が逃げ遅れてしまったのか」東日本大震災から13年…住民100人の避難行動を映像化 浮かび上がった“危険な避難行動” 生死を分けた津波避難の教訓【テレメンタリー】

「あんな高い津波が来るとは想定できなかった」
「あんなガス爆発が起きるとは想定できなかった」

全く同じ自然災害は起こらないので、東日本大震災と今回の熊本地震も当然異なりますが、共通点から学べることを考えてみます。

今回、私たちは、企業や組織に「人命を第一にする防災」を訴え続けてきた健太いのちの教室の田村孝行さんから、熊本地震後に公表されている企業対応を踏まえてお話を伺いました。

戻らないの今後を考える

事故が起きた後に「なぜ戻ったのか」「戻らなければよかった」と発信することも大事ですが、お恥ずかしながら、私たちが運営するMEET門脇の防災計画では「一旦避難した後の行動」や「避難時の携行品」を定められていませんでした。「戻らない」ために、この記事が参考になれば幸いです。

1.「戻らない」だけではなく「命を守る保証」を

「避難した建物には戻らない」は、1つの大切な原則です。

田村さんは、企業には従業員らの命と安全を守る責任があり「従業員が自らの命を守る権利、安全に避難する権利の保証」が重要だと話します。

今回の地震後の対応では、車や自宅の鍵、運転免許証などの避難行動に必須な携行品の扱いが注目されました。「戻るな」と禁止するだけでは十分ではなく、「戻らなくてもよい」ように、私たちが今から準備できることがあります。

イオンモール熊本の爆発事故について(第5報)/イオン
緊急事態の発生時における従業員の安全確保の強化について/オンワード
熊本日日新聞「『帰りなさい』と伝えていれば」ハビタ役員との一問一答

2.「想定」に関わらず、より安全な行動を

事故や災害の後には、「想定外」という言葉が繰り返されます。

田村さんは「予見可能性」を考える例として、サッカーの試合中に起きた落雷事故をめぐる最高裁判決の事例を紹介くださいました。
最高裁判所 平成18年3月13日判決(サッカー試合中の落雷事故)
(※試合開始前に暗雲が立ち込め、雷鳴が聞こえ、放電も目撃されていたことなどから、引率教諭は落雷事故の危険を具体的に予見することが可能だったと最高裁が判断)

田村さんは、ご自身が関わった裁判の「津波の高さの予想に関わらずより安全な場所に行くべきだという主張は尊重されるべき」という判決文記載も教えて下さいました。

災害の経験の伝承は、社会全体の「想像できること」を増やしていくことでもあります。

3.マニュアルはみんなで作り、自分のものに

「命を守る初動のマニュアルとBCP、この二つを分けて設定してほしい」
田村さんは、BCPの重要性と共に、その中で最優先とされている身体・生命の安全確保について、改めて強調されていました。
中小企業庁「緊急時におけるBCPの発動」
内閣府「事業継続ガイドライン」関連資料

総務や人事、専門家だけで作ったものを配り、「これを守ってください」と言われても、現場の方々が実際の災害時に動けるとは限りません。

田村さんは、「みんなで作り上げていく。そして日常的な訓練をし、足りないところはブラッシュアップ。みんなでつくっていくと自分のものになって、実践力があがって、いざという時に体が動いていく」と伝えてくださいます。

4.防災は、コストではなく投資

田村さんは、安全対策に時間や費用をかけることについても、
「コストではなく、投資だと思ってやってほしい」
と話しました。

「企業の立地条件を理解して事前の備えを徹底してほしい」と語った様子もNHKで報道されています。
「雑貨チェーン社員が震災の遺族から企業防災学ぶ」/NHKニュース紹介

過去の震災からの学びに時間やお金を使うことは、未来の危機から従業員やお客様のかけがえのない命を守るだけでなく、今、働く人の安心や組織への信頼にもつながります。

 5.「我が社も検討しよう」―伝承を、次の行動へ

今回のイオンモール熊本での出来事について、田村さんは重い言葉を口にしました。

「私達は15年間啓発してきたものが、皮肉にも答えになってしまった」

これまで企業防災について訴えてきたことが伝わりきらず、またもや人命が二の次になってしまったとの思いです。

しかし、田村さんが最後に話したのは、誰かを追及することではありませんでした。

今回の出来事を自分たちの問題として受け止め、
「我が社もやはり色々検討しよう」
と、一つひとつの企業や組織が考え始めること。

それが「今、やれること」だと話してくださいました。

「またもや人命二の次に」イオン爆発 従業員犠牲/健太いのちの教室・河北新報記事紹介
イオンモール熊本の爆発事故について(第6報)事故調査委員会発足

 経験を未来へ伝える人たちを、これからも支えていくために

3.11メモリアルネットワーク基金は、こうした震災を経験した方々自身が、その経験を未来の命のために伝えていく取り組みを支えるためにつくられました。
「健太いのちの教室」も、基金助成をさせていただいた団体の一つです。

今回、熊本で起きた出来事を受けて、15年間伝え続けてきた教訓と共に、改めて私たち自身の職場や組織のあり方を問われています。

もし、過去の経験が伝承されていなかったら、今回の出来事を自分たちの問題として考えることも難しかったかもしれません。

震災伝承の価値は、過去を忘れないことだけではありません。
今、私たちの判断や行動をアップデートし、未来の命を守ることにあります。

家族を失った方、被災した方々の「もう同じ思いをする人を生みたくない」という思いを伝える取り組みは、防災意識や防災行動の具体的な変化につながります。

田村さんのように、自らの経験を未来の誰かの命のために語り続ける人たちがいる。
その言葉を受け取り、自分たちの職場や学校、地域の備えを見直す人がいる。
そして、そのつながりを途切れさせないために支える人がいる。
私たちは、その循環を50年、100年先まで残していきたいと考えています。

今回の記事を読んで、
「この経験は、これからも伝えられてほしい」
「次の災害で、同じ犠牲を繰り返してほしくない」
「経験した方々の言葉を、未来の備えにつないでほしい」
と感じていただけましたら、ぜひ3.11メモリアルネットワーク基金を通じて、震災伝承に取り組む方々を支えていただければ幸いです。

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震災伝承を続ける人たちへのご支援を、よろしくお願いいたします。

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