3.11メモリアルネットワークでは、毎年「東日本大震災伝承活動調査」(来訪数調査、アンケート調査を各1回)を実施しており、8月11日に公開したアンケート調査速報について、詳報を公開致します。
今回のアンケート調査では、8つの大設問を設定し、岩手・宮城・福島の震災伝承団体の伝承施設運営組織の協力により調査速報を公開することができました。この場を借りて御礼申し上げます。
速報時より9件の追加回答と何件かの修正修正を踏まえて大問Q1~Q8の集計結果を修正したほか、自由記述回答、クロス集計回答を追記した他、県営3施設の最新来館数も報告させていただきます。
発災15年を経て復興財源が収束する一方、防災庁が設置されるなどの社会環境変化を踏まえて、東北の伝承は大きな転換期を迎えております。東日本大震災被災地域における伝承活動の全体像に触れ、命を守る取り組みを今後の15年、30年先へと続けてゆく基礎資料としてお役立ていただければ幸いです。
今回の調査では、Q1にて伝承活動の継続性について引き続き調査し、震災学習プログラム実施団体(以下、伝承団体)と震災伝承施設(以下、伝承施設)に双方で財源・人材について長期の見通しが難しい状況が確認されました。
Q2~Q7は新規の設問で、特にQ4の「伝承活動への対価と継続の負担」については、来訪者収入で必要費用・負担の半分以上まかなえている伝承団体は37%、伝承施設は0%でした。参加者・来館者からの対価収入で賄えない不足部分について、震災伝承団体は「別事業収入からの補填」「寄付支援」「無償協力」によって、伝承施設は「自治体予算」によって確保されていました。
伝承団体は、次世代が継続するための財源として「震災伝承の国・自治体予算」を理想的としながらも、参加者からの収入や他事業補填、寄付、無償協力などを現実的な財源・負担と考えるギャップが確認されました。
震災伝承団体の継続の不安は87%、伝承施設は69%で、高い割合でした。
活動資金の1年後、3年後の短期見通しは若干改善したものの、10年後、30年後の長期見通しは前回とほぼ変化がなく大半が見通しを持てていない状況でした。

人材についても同様に、1年後、3年後の短期見通しは若干改善したものの、10年後、30年後の長期見通しは前回とほぼ変化がありませんでした。
「施設展示・見学」の選択肢には伝承団体・伝承施設の回答割合に大きな差が見られ、「語り部・講話」に多くの回答が得られました。
防災意識の向上や行動変化を促す内容についても、「施設展示・見学」の選択肢には伝承団体・伝承施設の回答割合に大きな差が見られましたが、「語り部・講話」には伝承団体・伝承施設ともに最多の回答が得られました。
「事実や教訓を正しく理解」以外は、伝承団体の方が、伝承施設よりも多くの回答が得られ、「継続的な再訪を希望」「防災を超えた人生の指針」の回答には伝承団体と伝承施設で差が見られました。
伝承団体の方が、伝承施設よりも人材スキルアップ・他地域研修に多くの回答が得られました。
伝承団体は不定期改善が最多でしたが、伝承施設は年に1回以上の定期改善が35%でした。
地域、県外の学生が最も重視され、訪問も多いことが確認されたほか、伝承団体では大学生や教員の訪問に重視している層と実際の訪問層に差異が確認されました。
伝承団体の最多回答は「新たな語り部・ガイドの確保」「担い手の研修・専門性向上」への「研修機会の提供」と「広報・誘客の強化」への「公的媒体での情報発信」で、伝承施設の最多回答は「施設・設備の維持更新」への「補助・助成」でした。
伝承施設は多くが入館料無償設定でしたが、伝承団体の多様な料金設定がされていました。
参加者の来訪者収入で必要経費・負担を半分以上賄えている伝承団体は37%、伝承施設は0%でした。
同じデータを帯グラフの別の形でも記載いたします。
参加者収入向上に尽力する伝承団体が、来館無料の伝承施設から「(参加者収入をとって)自立してください」と求められるケースも多く、ご遺族や語り部の個人的な負担に頼るだけでなく、伝承継続のために必要な負担・費用のうち参加・来館される方にどれだけ分担いただくのが適切なのか、考えてゆく必要があります。
来訪者収入でまかなえない不足分の確保手段は、伝承団体は「(自助)組織の別事業収入からの補填」で、伝承施設は「(公助)震災伝承の国・自治体予算」でした。
今後、次世代が伝承を継続するための理想的、現実的な財源について、伝承団体は「(公助)震災伝承の国・自治体予算」において理想が現実を大きく上回る一方、逆に、「(自助)組織による別事業収入からの補填」「(自助)組織・構成員の無償極力」では現実が理想を大きく上回っていました。
伝承施設では「(共助)民間資金の獲得」「(共助)専門人材や機関からの人的協力」が理想が現実を大きく上回っていました。
回答いただいた伝承団体への総来訪数約12万人のうち、86%が市町村外、61%が県外、海外は1.7%でした。
回答いただいた伝承施設への総来訪数約64万人のうち、予約等で来訪地域が把握できる範囲で約5割で、そのうち、市町村外からの訪問が88%、県外からが60%、海外からは3.5%でした。
本設問の回答者へは特にご負担をおかけしてしまい、改めて御礼申し上げます。震災伝承の活動や施設の受益者は市町村内の住民に留まらないため、県全体・国全体での施策検討に活かしていただければ幸いです。
伝承団体・伝承施設ともに、最多回答は「公共交通手段の利便性」でした。
伝承団体は「事前学習教材の提供」が最多で、伝承施設は「特に実施していない」割合が最多でした。
伝承団体・施設ともに「語り部(体験・想いの継承)」が最多で、伝承団体は100%の回答でした。
「とても必要」「どちらかというと必要」の回答が伝承団体は100%で、伝承施設は91%で、「必要でない」の回答はありませんでした。
「とても必要」「どちらかというと必要」の回答が伝承団体・伝承施設ともに90%でした。
「どちらからというと必要でない」の伝承団体が3%、「必要ではない(現状で問題ない)」の伝承施設が6%ありました。
これまでに実現した項目は「県内伝承団体・施設の館内紹介」が最多56%で、それ以外の全項目に渡り、「これまでに実現」(2~15%)と「今後期待」(54~75%)に大きな差が見られました。
前回同様、「東日本大震災の価値発信」が伝承団体、伝承施設ともに、90%の高い割合での最多回答でした。
Q2(6)参加者・来訪者に生じた変化、Q3(2)公的支援、Q4(5)次世代への伝承活動の費用や負担の在り方、Q6(4)次世代への伝承活動の人材や体制の在り方、Q7(1)復興祈念公園との連携・協働(その他)、Q8(1)3.11メモリアルネットワークへの期待(その他)において、自由記述回答をPDF形式にて紹介します。
参加者・来訪者の変化の多くの具体的なエピソードを回答頂いたほか、国へ県からの援助、人材育成の仕組みづくりの必要性に関しては複数の回答が寄せられました。被災地域の広域をつなぐ体制に関しては期待の声もいただいた一方で「つなぎ役をやるべき組織がやっていないのではないか」との厳しいご意見ももありました。
本アンケート調査ついてクロス集計を試みました。強い因果関係を確認するには至りませんでしたが、幾つか紹介させていただき、継続調査して参ります。
Q1の10年後の財源見通しがない団体ほど、Q4の多くの財源をあてていました。(「柱」はQ4選択肢の「自助」「共助」「公助」の区分です。)
Q6(1)で専任人材を重要視する組織は、Q2(5)の改善活動の頻度との関連が見られました。
2024年から2025年にかけての来訪数の増減とのクロス集計も試みました。
事前・事後学習なしの組織よりも、事前学習のみ、事後学習あり、の組織の方が来訪数増加割合の中央値が伸びている傾向が見られました。
この度のアンケート調査に合わせて、1団体から追加回答、2団体から修正があっため、2025年12月までの来訪数の推移グラフを以下の通り更新させていただきます。
岩手・宮城・福島の県営伝承施設のみ、2026年9月まで(10月~9月ベース)の最新の来訪数推移について各施設より情報提供いただきましたので、3施設のみのデータですが紹介します。3県伝承団体・伝承施設全体を対象とした来訪数調査は2027年1月を予定しております。
【対象】岩手・宮城・福島の3県で震災伝承活動に取り組む団体、施設
【趣旨】説明資料を対象に配布
【期間】2026年7月26日〜8月11日(速報時)および10月14日までの追加回答
【方法】メールで依頼・フォームで回答
【実施主体】公益社団法人3.11メモリアルネットワーク
【アドバイザー】東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授
【協力】一般財団法人みちのく創生支援機構
以下の伝承団体、伝承施設の皆さまに回答をいただき、感謝申し上げます。
震災学習プログラム:30団体(速報時より5追加)(岩手9/宮城17/福島4)
宮古観光文化交流協会、おらが大槌夢広場、かまいしDMC、三陸鉄道、陸前高田観光物産協会、陸前高田被災地語り部くぎこ屋、トナリノ、大船渡津波伝承会、吉里吉里国
けせんぬま震災伝承ネットワーク、ケセンヌマベースキャンプ、三陸復興観光コンシェルジェセンター、南三陸ホテル観洋、雄勝花物語、大川伝承の会、石巻観光ボランティア協会、3.11メモリアルネットワーク、女川町観光協会、健太いのちの教室、SAY’S東松島、七郷語り継ぎボランティア 未来へ‐郷浜、いわぬま震災語り部の会、津波復興祈念資料館 閖上の記憶、ふらむ名取、震災語り部の会ワッタリ、やまもと語りべの会
ふくしまリアリ、富岡町3・11を語る会、大熊未来塾、いわき語り部の会
震災伝承施設:運営32組織(速報時より4追加)(岩手8/宮城15/福島9)
※複数の施設を運営している組織については、回答は1件としています。
宮古市災害伝承資料館、いのちをつなぐみらい館、大船渡市防災学習館、大槌町文化交流センター、大槌伝承の館、東日本大震災津波伝承館、311仮設体験館、陸前高田市立博物館
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館、リアス・アーク美術館、南三陸311メモリアル、石巻市震災遺構門脇小学校・石巻市震災遺構大川小学校、みやぎ東日本大震災津波伝承館、MEET門脇・南浜つなぐ館、石巻NEWSèe、東松島市復興伝承館、せんだい3.11メモリアル交流館・震災遺構仙台市立荒浜小学校、蒲生なかの郷愁館、津波復興祈念資料館閖上の記憶、名取市震災復興伝承館、岩沼市千年希望の丘交流センター、山元町震災遺構中浜小学校、山元町防災拠点・山下地域交流センター
相馬市伝承鎮魂祈念館、震災遺構浪江町立請戸小学校、東日本大震災・原子力災害伝承館、東京電力廃炉資料館、とみおかアーカイブ・ミュージアム、福島県環境創造センター、原子力災害考証館furusato、いわき震災伝承みらい館
昨年同様12月に伝承調査報告書を冊子として発行予定のほか、シンポジウム、交流会等で共有させていただきます。また、来年2月には2026年12月までの来訪数調査速報を公開予定です。
※昨年調査報告書参考リンク:2024年震災伝承調査報告書冊子を公開
命を守る震災伝承活動を未来に継続してゆくため、少しでもご参考になれば幸いです。
報道いただき、感謝申し上げます。
10月22日 NHK 宮城 震災伝承の施設・団体 多くは来訪者収入で経費賄えず
10月22日 仙台放送 震災伝承施設全てが「来場者収入だけで運営費賄えず」 教訓を後世に伝える活動の継続に大きな課題
私たちの理念である「災害で命が失われない社会を目指す」に共感し、
全国で1,000人を超える方々が広域伝承連携メンバーとして参加しています。
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