【報告】3.11伝承交流・視察ツアー開催

2022/12/3(土)、「3.11伝承交流・視察ツアーin大川/南三陸~伝え継ぐ志と工夫を体感しよう~」を開催しました。
岩手・宮城・福島を中心に、伝承活動に携わる方約30名にご参加いただき、多様な伝承の手法を学び合う機会となりました。
 

●石巻市大川地区でARアプリを使った震災伝承を知る・体験する

「大川伝承の会」の永沼さんの案内で、「記憶の街」ARアプリを使いながら、震災遺構大川小学校周辺のまちあるきを体験しました。

アプリを目の前の景色にかざすと、種類別に色分けされたタグと、「郵便局があった」「大晦日はこのお寺で鐘をついてから神社へ」「ここの遊具が大好きだった」といった地域の方の言葉が表示されます。

アンケートでは「アプリ開発の経緯や思いを知れてよかった」「大川小学校と聞くと悲しみが先にきてしまうが、アプリの中で楽しかった思い出を表すタグを見て、とてもいい場所だったことを知れた。その上でこんなにも犠牲がでてしまったことは悔しい」などの声が寄せられました。

参加者のほとんどが、過去に大川小学校を訪問したことのある方でしたが、以前とは異なる視点、学びや気づきを得られる機会となりました。

 

●南三陸志津川地区で祈念公園、伝承施設、道の駅が一体になったエリアでの震災伝承を知る・体験する

午後は、南三陸町へ移動し、まちあるきと施設見学・ラーニングプログラムを体験しました。

祈念公園のまちあるきは、3グループに分かれ、語り部ガイドさんにご案内いただきました。

過去の災害や震災前の防災意識にも触れながら、ガイドさんお一人お一人の東日本大震災の体験をお伺いすることができました。
震災の悲劇ばかり取り上げるのではなく、その後に私たち自身がどのように振り返り、考え、行動できるか。同じ被害を繰り返さないために、今、私たちに何ができるのかを、問いかけていただきました。

「南三陸311メモリアル」は、今年10月に開館したばかりということもあり、「祈念公園やさんさん商店街には来たことはあるが、伝承施設は初めて」という方が多くいらっしゃいました。

ここでは、映像を活用した「ラーニングプログラム」を体験しました。
当時子どもだった世代をはじめ、様々な立場の地元住民が震災当時の経験を語る映像を視聴し、それを受けて考えたことを、お隣に座っている参加者同士で対話する時間も設けられています。
「映像がよかった。若い世代の言葉が聞けてよかった」「今まで経験したことのない感じで、考えさせられた」などの感想がありました。

その後、別室に移動し、南三陸町観光協会様より、震災伝承の取り組みについて講話いただき、質疑応答を行いました。

震災前から観光協会で勤務していた及川さんからは、壊滅状態になった町を前に「もう何十年も観光の仕事はできないかもしれない」と感じた震災直後から現在に至るまでの軌跡、語り部ガイドをはじめた経緯などのお話をお伺いしました。
震災後に移住され、南三陸311メモリアルを担当となった大石さんからは、施設の概要とプログラムの設計、現状・課題などについて教えていただきました。

講師のお二人は、時間設定やプログラム設計の難しさ、伝承施設と知らずに来館する方の対応といった課題、今後の対応策なども教えてくださいました。参加者からは、「ラーニングプログラムの対話の時間が短かかった」などの意見も出ましたが、それはそのまま、自分自身の課題でもあります。
「来訪者のニーズを加味しながら、限られた時間で、伝えたいことや思いを届ける難しさ」は、多くの関係者が共感するところであり、深く頷く人の姿もありました。

参加者は皆、普段は別々の地域で活動をしていますが、事例や課題をお互いに共有し、知恵を出し合うことの大切さを、改めて感じる機会となりました。
参加者からは、これから「南三陸311メモリアル」と連携していきたいという発言もあり、様々な意味で、今後につながる視察になったと思います。