3.11メモリアルネットワークでは、震災学習プログラムの提供や震災伝承施設の運営に取り組む皆さまにご協力いただき、2017年以降毎年「東日本大震災伝承活動調査」を実施しております。
8月11日に2024年東日本大震災伝承活動調査第2弾(速報)を公開した後、震災学習プログラム実施3団体、震災伝承1施設よりいただいた回答を集計に追加した他、「その他」でいただいた回答を補足した詳報版を公開させていただきます。
第2弾では、Q1~Q9のアンケートを実施し、3県の震災学習プログラム実施団体(以下「伝承団体」)28団体、震災伝承施設(以下「伝承施設」)27施設運営組織のご担当者が協力してくださいました。改めて、調査協力いただいた皆さまに感謝申し上げます。
東日本大震災発災から15年、復興庁の定めた第2期復興・創生期間が終わろうとしている中で、震災伝承活動において、改めて、語り部の必要性や今後の不安が明らかとなりました。
「後世への伝承継続のために特に重要だと思う人材」は、伝承団体、伝承施設共に「語り部(体験、思いの継承)」が最多回答を得ていますが、その伝承団体の96%「継続する上での不安」を抱えています。
「継続性の不安」は、2020年からの継続設問であり、伝承団体の「継続性の不安」は、コロナ禍の2020,2021年でも7割弱でしたが、2022年調査時に9割に急増し、2023年調査よりも高まっています。
(参考:伝承団体の「継続性の不安」の割合推移)
2020年調査(対象26団体):69%
2021年調査(対象25団体):68%
2022年調査(対象24団体):94%
2023年調査(対象28団体):92%
2024年調査(対象28団体):96%
また、岩手・宮城・福島の各県には国営追悼施設を含む復興祈念公園が進んでおり、多様な主体の参画やゲートウェイ機能を掲げられている中、「国が関わる祈念公園との連携・協働の実現」に対しては「とてもそう思う、どちらかというとそう思う」が伝承団体・施設共に3割で、協働や連携に関する課題や期待の声が自由記述欄からも確認されました。
「復興庁に期待すること」は「被災自治体の伝承・防災施策の財政支援」、「防災庁に期待すること」は「防災行動を促す政策・法制度の整備」であり、「県に期待すること」は「自治体の伝承・防災施策の連携支援」、「市町に期待すること」は「多様な民間活動の自立性・持続性向上の環境整備」で、国、県、地方自治体に向けて、それぞれ異なった役割と期待が寄せられていました。
防災庁新設の議論がある中、未来の命を守る防災意識や行動の喚起の視点から「来訪者の意識や行動を変えるために語り部/震災伝承施設は寄与するか」を初めて尋ねたところ、来訪者の意識・行動変化への寄与について伝承施設からの回答は「震災伝承施設」に対して「とてもそう思う」が63%、「震災の語り部」に対して「とれもそう思う」が78%で、「語り部」への高い評価が確認されました。また、伝承団体からの回答も「震災伝承施設」に対して「とてもそう思う」が74%、「震災の語り部」に対して「とてもそう思う」が79%でした。「とてもそう思う」「どちらかというとそう思う」も加えると、「語り部」も「震災伝承施設」も100%もしくはそれに近い方が来訪者の意識・行動変化への寄与を実感しており、震災伝承施設と語り部の組み合わせが、防災行動につながることが示唆されたと考えております。
30年後に伝承人材の継続見込みのある伝承団体は0、施設2組織のみ、という厳しい環境ではありますが、成果指標も共有されていない新しい取り組みであるからこそ、震災伝承活動の充実と活性化により次の災害から命が守れる期待が確認された調査でもあると捉えておりあmす。
次世代への伝承に向けた持続性を高めてゆくための基礎資料としてお役立ていただければ幸いです。
東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔
調査にご協力いただきましたすべての団体・施設の皆さまに、心より敬意と感謝を申し上げます。東日本大震災の発災からまもなく15年をむかえ、復興・創生期間が終結に向かうという重要な節目にあって、震災伝承活動が直面する現状と課題が整理されました。
団体様の96%が「継続する上での不安」を抱えており、この割合は、コロナ禍の時期や2023年調査よりもさらに高まっているという点に着目しなければなりません。コロナ禍では、東北”地方”にある震災学習に全国から関心が高まり、思ったよりも利用が減らなかったり、逆に利用が増えた事例がありました。しかし、コロナ禍が明けて、徐々に人流動態がそれ以前の状態に戻り、東北地方の震災学習から、やや足が遠のいている実態が前記の「不安」を生んでいるようにもみられます。そのためにも、震災学習の魅力や効果を高め合って、より選ばれる場所・プログラムにしていくことが重要です。
さらに、いつか地域に災害が起きてしまうかもしれないことをふまえれば、地域に根ざした震災学習を定着化していく必要があります。そのためにも、小中高大という教育の課程に震災学習が盛り込まれることが重要になります。学校教育のなかに震災学習が取り込まれるような、本調査でも多く声が上がっているように、バス移動やコーディネートの支援のより一層の充実化が求められます。
アドバイザーとしてご助言・ご協力いただきました佐藤翔輔准教授に、改めて感謝申し上げます。
以下、震災伝承調査第2弾の詳報(Q1~Q9の各設問回答グラフと自由記述)を報告いたします。


「市町村内・県内の学校」において震災学習が根付くためには、第1が「教員向けの震災学習勉強会・研修会」、第2が「被災地訪問バス代等の移動補助」の順で、回答数が多かった。方「県外の学校」において震災学習が広がるためには、第1が「被災地を学校をつなぐコーディネート機能」、第2が「被災地訪問バス代等の移動補助」であった。第2のバス代補助が県内・県外共に求められていたが、最多回答は、県内は「教員向けの震災学習勉強会」、県外は「コーディネート機能」と、回答が分かれた。


伝承団体は100%、伝承施設は96%から、複数の主体が連携して防災教育に取り組むことの重要性について「とてもそう思う」または「どちらかというとそう思う」との回答が得られた。




復興庁、防災庁、県、市町への期待は、それぞれ、249回答、278回答、268回答、212回答で、防災庁への期待が最も多かった。また、伝承団体と伝承施設に関しては、復興庁と県に対しては期待の回答数に大きな差異は無かったが、伝承施設は防災庁に、伝承団体は市町に多くの期待を回答する傾向にあった。
復興庁に対しては、最多回答が「伝承・防災活動(ソフト)への財政支援」、「被災自治体の伝承・防災施策の財政支援」であり、最小回答が「防災行動変容を促す優良事例の収集・広報」であった。
防災庁に対しては、「防災行動変容を促す政策・法制度の整備」が最多で、「自治体の伝承・防災施策の連携支援」が最少であった。
県に対しては、「自治体の伝承・防災施策の連携支援」が最多で、「防災行動変容を促す政策・法制度の整備」が最少でであった。
市町に対しては、「多様な民間活動の自立性・持続性向上の環境整備」が最多で、「防災行動変容を促す政策・法制度の整備」が最少であった。


来訪者の防災意識や行動変化のために語り部が寄与するかを問うたところ、伝承団体・伝承施設共に100%が「とてもそう思う」または「どちらかというとそう思う」と回答した。
伝承施設からの回答は、施設の寄与で「とても思う」が63%だったのに対し、語り部の寄与について「とても思う」が78%であり、伝承施設側も語り部の寄与を重く見ていることが確認された。


国が関わる復興祈念公園と自組織との連携・協働が実現ができているかの設問に対し、伝承団体の32%、伝承施設の30%が「とてもそう思う」または「どちらかというとそう思う」と回答した。


来訪数増加のための企画・工夫に対して、伝承施設の方が多くの回答が得られた。

震災伝承の「成果」指標については、合計回答数の最多が「伝承団体や施設への来訪者数」で、最小が「復興庁教訓継承サイトの普及開発コンテンツ数」であった。
「来訪数」、「自治体の最多外対応能力」、「復興庁サイトのコンテンツ数」の他は、伝承団体の方が多く回答する傾向にあった。

後世への伝承継続に特に重要と思う人材は、伝承団体・伝承施設共に「語り部」が最多の回答を得た。


伝承団体の96%、伝承施設の73%が継続性の不安に関して「大いに不安がある」または「どちらかというと不安がある」と回答した。


活動資金も、活動人材も、1年後、3年後、10年後、30年後と経過するごとに見通しがつかなくなる傾向が確認された。
また、伝承団体よりも伝承施設の方が「はっきり見通しがついている」または「大体見通しがついている」の回答が多い傾向にあり、伝承団体の過半数は1年後の人材見通しが「余り見通しがついていない」、「全く見通しがついていない」、「わからない」の回答であった。



「第2期復興・創生期間後」の公的な資金支援への期待を尋ねたところ、伝承団体の76%、伝承施設の54%が「拡充」への期待を示した。

伝承団体・施設からの3.11メモリアルネットワークへの期待の合計最多回答は「東日本大震災の伝承の価値発信」で、2番目は「岩手・宮城・福島の伝承現状・課題の調査」、「岩手・宮城・福島のネットワーク(東北全体としての)発信」が同数、3番目が「全国の被災地、防災関連組織との連携」、「教職員を対象にした被災地視察研修」の同数であった。
また、伝承団体と伝承施設からの回答で5件以上の差があった項目は「岩手・宮城・福島での広域的な震災学習ツアー推進」(団体19件、施設12件)、「岩手・宮城・福島の個別の伝承活動の広報」(団体11件、施設16件)、「伝承団体を支える基金寄付募集と助成」(団体15件、施設10件)であった。
皆さまのご期待に応えられるよう、検討して参ります。
【対象】岩手・宮城・福島の3県で震災伝承活動に取り組む団体、施設
【期間】2025年7月18日〜8月10日および9月10日までの追加回答
【方法】メールで依頼・フォームで回答
【実施主体】公益社団法人3.11メモリアルネットワーク
【アドバイザー】東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授
【協力】一般財団法人みちのく創生支援機構、公益社団法人CivicForce
以下の伝承団体、伝承施設の皆さまに回答をいただき、感謝申し上げます。
震災学習プログラム:28団体(岩手7/宮城17/福島4)
宮古観光文化交流協会 学ぶ防災、吉里吉里国、おらが大槌夢広場、かまいしDMC、三陸鉄道、三陸ひとつなぎ自然学校、陸前高田観光物産協会
階上地域まちづくり振興協議会 語り部部会、気仙沼市観光協会、三陸復興観光コンシェルジェセンター、南三陸ホテル観洋、雄勝花物語、大川伝承の会、石巻観光ボランティア協会、3.11メモリアルネットワーク、女川町観光協会、健太いのちの教室、SAY’S東松島、七郷語り継ぎボランティア 未来へ‐郷浜、いわぬま震災語り部の会、津波復興祈念資料館 閖上の記憶、ふらむ名取、震災語り部の会ワッタリ、やまもと語りべの会
ふくしまリアリ、富岡町3・11を語る会、大熊未来塾、いわき語り部の会
震災伝承施設:運営26組織(岩手6/宮城14/福島6)
※複数の施設を運営している組織については、回答は1件としています。
いのちをつなぐみらい館、大船渡市防災学習館、大槌町文化交流センター、大槌伝承の館、東日本大震災津波伝承館、陸前高田市立博物館
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館、リアス・アーク美術館、南三陸311メモリアル、石巻市震災遺構門脇小学校・石巻市震災遺構大川小学校、みやぎ東日本大震災津波伝承館、MEET門脇・南浜つなぐ館、石巻NEWSèe、女川町まちなか交流館、東松島市復興伝承館、せんだい3.11メモリアル交流館・震災遺構仙台市立荒浜小学校、津波復興祈念資料館閖上の記憶、名取市震災復興伝承館、岩沼市千年希望の丘交流センター、山元町震災遺構中浜小学校、山元町防災拠点・山下地域交流センター
東日本大震災・原子力災害伝承館、東京電力廃炉資料館、とみおかアーカイブ・ミュージアム、福島県環境創造センター、原子力災害考証館furusato、いわき震災伝承みらい館
私たちの理念である「災害で命が失われない社会を目指す」に共感し、全国で1,000人を超える方々が広域伝承連携メンバーとして参加しています。
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