【報告】新型コロナウイルスの震災伝承活動への影響に関する緊急アンケート

新型コロナウイルス感染拡大により、震災伝承、防災・減災活動においても影響が大きくなってきたことを受け、3.11メモリアルネットワークでは、この3月末から、関係者に向けた緊急アンケートを実施いたしました。

岩手・宮城・福島を中心に日頃から語り部や震災学習プログラム等に取り組む30団体/個人にご回答いただきました。
ご協力いただきました皆さま、誠にありがとうございました。

多くの団体で2月下旬以降、先々の予約分までキャンセルが相次いでおり、またキャンセル数には現れませんが、例年ならばあるはずの新規申し込み連絡もなく、厳しい状況が続いています。

まだまだ先が見えない状況ではありますが、まずは、この度のアンケート結果を、以下にご報告いたします。

 

「新型コロナウイルスの震災伝承活動への影響に関する緊急アンケート」

【対象】語り部や震災伝承関連の活動をされている団体/個人
【期間】2020年3月24日〜4月7日
【方法】WEBアンケート
【協力】東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授
【回答者】岩手・宮城・福島を中心に30団体/個人

※地域詳細:大槌町、釜石市、陸前高田市、気仙沼市、南三陸町、女川町、石巻市、東松島市、大崎市、仙台市、名取市、亘理町、富岡町、いわき市、岐阜県、愛媛県
※元々は4月3日〆切としていましたが、7日分までは頂戴したご回答を含めています。

 

キャンセル数

回答時点での新型コロナウイルスによるキャンセル数の合計は、302件、9,235名となっています。

※0名から800名以上と、団体/個人によっても差がありました。
※早い時期に回答してくださった団体/個人では、さらに増えているものと思われ、現時点でのキャンセル数は、実際はこれよりも多いものと考えられます。

 

3月末時点の活動状況


 

民間の語り部受け入れや伝承施設の運営については、現状、それぞれの団体/個人の判断に委ねられており、対応も様々です。3月末時点ですでに活動を休止しているところもあれば、基本は普段通りに活動しているという団体/個人もいます。(ただし、「普段通り」と回答されているところも、キャンセルにより実際の活動実績は縮小していることが多くあります。)
また、4月以降に方針を変更している場合もあります。

 

3月の語り部等参加者数の前年同月比


 

3月は、3.11と春休みが重なることもあり、冬季の来訪者落ち込みが回復する月ですが、今年は様々な行事が中止になったり、キャンセルが多く発生しました。そのため、今年は多くの団体/個人で受け入れ人数が例年よりも減少しているものと見られます。

 

困っていること

皆さまからいただいたコメントをもとに、いま特に困っていることについて、整理しました。

  • 新型コロナ感染拡大の収束時期が見通せず、今後どうなるのかわからない中で、行事の企画・開催ができない/キャンセルが相次いでいる/新規申し込みが入らない/調整が進められない。(今後の活動予定が全てなくなったという団体もある。一方で、学校や企業など申し込み側でも、次年度の計画の見通しが立てられずに困っている。)
  • 公共施設等の判断と異なり、民間の伝承活動は、何をどこまで実施して良いのか?活動を休止した場合どのタイミングで再開するのか?の判断が難しい。活動を継続する場合も、感染の心配がある一方で、感染症対策の物品も入手しづらい。(近隣で感染者が出て不安を感じている声が聞かれる一方、岩手では現時点で感染者が出ていないため、かえって判断がしづらく悩ましいという声もある。)
  • 春の修学旅行等を秋に延期したいという問い合わせは多いが、元々予約の多い秋に春の分まで集中することで現場がパンク状態になることへの懸念がある。そもそも、現時点では秋に開催できるという保証もない中で調整対応は行わなければならない状況にある。
  • 東日本大震災から10年目となり来訪を予定していた人も多くいたと思われるが、移動が制限される中、そうした人も来られなくなっており、収束後も当初想定していたほどは来てもらえないのではないか伝えようと思っても伝えられなくなるのではないかという不安がある
  • 語り部や震災学習プログラム、企業研修、団体によっては宿泊や物販等で見込んでいた事業収入が得られなくなり、経済的に困っている。補償の見通しが立たず、特に複数のスタッフを雇用していたり、上記の事業収益を主要な財源として育ててきた団体で、資金難に陥り収束前に廃業してしまう懸念や、収束後も返済等で厳しい状況が続くなるのではないかという不安が大きくなっている